守りたい私の大事な後輩


ガシャーン



光から今から来てほしいと電話が来たのが10分前。夜だとかそんなことは関係なしに家を飛び出した。

普段は光が住むマンションまで5分しかかからないけど、今日はたまたま白石に会ってしまって、財前に会いに行くのかだとかあいつは大丈夫なのかとか聞かれて遅くなった。白石が光を心配するのはわかるけど、今はそれどころじゃなくて、途中で白石の話を切り上げて走る。ごめん、白石。

それで今、光の家の前についたと思えば中から何かが割れる音。まずい、やっぱり遅くなってしまった。急いで合鍵でドアを開ける。


「ひかる!!」

「あ、名前先輩っ」

「大丈夫?怪我してない?」

「先輩っ、先輩っ、遅いじゃない、ですかっ」

「ごめんね、途中で白石に会っちゃって」

「ぶちょ?」

「うん、光のこと心配してたよ」

「いやっ!せん、ぱ・・・どこもいかんで」

「大丈夫だよ、ここにいるから」



ドアを開けるとやっぱりそこには家具やらなんやらが散乱してた。そして顔をぐちゃぐちゃにして大泣きしている光。ああ、また光を守れなかった。心の中にまた一つ罪悪感が募る。

私達は付き合っているわけではないし、私が光を気にかけるのはおかしいのかもしれない。でも、今の彼には私しかいないのだ。



「せんぱ、先輩っ!」

「光!手!血がっ」

「また・・・やっ、ちゃった」

「光、もうやらないって約束したでしょ」

「ごめ、なさ!嫌いに、なっちゃや、だ!」



リストカット。光の直らない癖。何回もうやらないと約束しても光はそれをやめることができない。

それは光が自分自信を守るため、生きるため。それをわかってても光の腕が傷ついていくのを見る度に心がズキスギ痛む。



「や、だ!!ごめなさっごめん、名前せんぱ、ごめんなさ、い!!」

「ひかる!」

「も、しないから!嫌わ、ないで!」

「光!!」

「っ、」



パニックを起こしてしまった光を優しく抱きしめる。血が服に付くのなんて気にしない。

ごめん、光。私がもうちょっと早く来てたら光の腕は傷つかなかったかもしれないのに。走りながら電話したら光の傷を深くすることもなかったかもしれないのに。



「光のこと嫌いなんかじゃないよ」

「す、き?」

「うん、大好き」

「せんぱっ!大好き大好きっ!」



その言葉に嘘はない。光のことは大好き。かわいい、本当にかわいい後輩。。光はこんなにも弱いんだ。私が守ってあげなきゃ。


頭を優しく撫でてやると光はゆっくり瞼を閉じて私の腕の中で寝てしまった。



「せん・・・ぱ」

「ごめんね、光。大好きだよ」



そんな光の髪に静かにキスした。

それからベッドに寝かせて、何回も泣きそうになったけどなんとか堪えて腕の手当をする。それから家具を直してもらうために謙也に電話をした。








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