抜け出せない依存


「ひかる!」

「せ、んぱい?



勢いよく屋上のドアを開けば、小さくなってる光がこっちに振り向いて、立ち上がったと思えば駆け寄って来る。よかった。何事もなさそうな光にホッと胸を撫で下ろす。



「先輩っ!先輩っ!」

「光、遅くなっちゃってごめんね。先生の呼び出しが長引いちゃって」



ぎゅうぎゅう私に抱き着きながら涙をボロボロ流す光。ごめん、光。咄嗟に出た嘘を心の中で謝った。



「遅い、っす」

「ごめんね」

「来ないかと、思った」

「そんなわけないよ。待っててくれてありがとう」



そういって光の頭を優しく撫でると、よかったと言って小さく笑う。愛しさと罪悪感が胸で渦巻く。でも、そんな光を見たからさっきのことなんか忘れられた。大丈夫、光を支えなきゃ。私は大丈夫。



「光、このまま午後はサボっちゃおうか」

「 っ、はい!」

「よし!じゃあ建ってないで座ろう」

「こ、こっちっす!」

「そんなに急がなくても大丈夫だよ」



光が座った隣に私も座ると、光が寄り掛かってきた。お腹の当たりがズキッと痛んだ気がしたけど気づかないふりで少しだけ目を閉じた。あ、どうしよう。眠たくなってきちゃった。



「先輩?」



光の声に返事できないまま私の意識は薄れていった。




――――――――――――――――




「寝たん、すか?」



顔を覗き込んだら気持ち良さそうに寝てる先輩。ああ、かわええ。先輩の温もりが、微かに当たる髪が、繋いでる手が、全部が愛しい。

最近は自分でも落ち着いてきたって思う。昔のことを思い出す回数も減ったし、リストカットもせんくなってきた。けど、それと反比例するように先輩への気持ちが大きくなってる。



「せん、ぱい」



好き?愛してる?そういう感情はもうわからん。あん時から一回だってわかったことなんかない。
ただ、名前先輩は誰にも渡さない。どこにも行かせない。自分でも依存しすぎやって思うけど、それでも俺は名前先輩から離れられん。完全に信頼できるのは先輩だけで、今でも俺には先輩しかいないんや。



「ひ、かる。大丈夫、だよ」


「先輩っ」



ああ、名前先輩名前先輩名前先輩。どこにも行かんといてください。俺だけ、見てて。














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