迫りくる危険
「なに、これ」
朝、下駄箱を開けたらそこにはゴミやら画鋲やらでぐちゃぐちゃになってる上履きがあった。
「先輩、どうしたんスか?」
「え、いやなんでもないよ!ごめん光、私部室に忘れ物しちゃったみたいだから取って来るね」
「えっお、おれも行くっ!」
「授業遅れるかもしれないから、先に行ってて」
「っやだ!」
「大丈夫だから、ね?」
光の背中を軽く押すと渋々歩きだす。送ってあげられなくてごめんね、光。光が廊下を曲がったのを確認して職員室に急ぐ。
いきなりのことに心臓が早い鼓動を打つ。光の前で不自然じゃなかったかな。これから、どうしよう。とりあえず落ち着かなきゃ。
「先生、スリッパってありますか?」
「なんだ苗字、スリッパはあるけどどうかしたんか?」
「ちょっと持って帰ったら忘れちゃって」
持って帰るってなんでやねん!なんてツッコミをしてる先生はスルーしてスリッパを受け取る。
「ありがとうございます」
「おい、苗字!ツッコミ無視せんといてくれ!」
やばい、ホームルーム間に合わない。遅刻とかこれ以上目立つようなことはしたくない。てか、先生も早くクラス行かなきゃいけないでしょ。
ガラッ
「はあ、間に合、った」
「遅いねん名前」
「ユ、ジ」
私が教室に入ると周りの視線が集まる。怖い。今までもなんともなかったみんなの視線が今はとてつもなく怖い。
「なんかお前顔色悪いで」
「大丈、夫」
「てか、スリッパどないしてん」
「家に忘れちゃって」
「はあ?意味わからんわ!本間なんかそれ」
「本当だよ」
「 ・・・」
さっきは光にばれないように必死だったけど、徐々に恐怖心が沸き上がる。
この教室のどこかで悪口を言われてるかもしれない。教室の隅で集まってる友達は私のことを話してるかもしれない。
「 っいた!・・・カミ、ソリ?」
机の中から出てきたのはやっぱり剃刀。どうしよう、血が止まらない。しかも教科書を開いたら"キモイ""男好き"やらいろいろかかれてた。なんで、昨日まで何もなかったのに。
「おい、お前!」
「え、 ちょユウジ!」
いきなり、教科書を取り上げられる。
「なんやねん、それ」
「なんでもない」
「なんでもないちゃうやろ」
「なんでもないってば!」
やばい大きい声出しすぎた。周りの視線がさらに集まる。
「っ、行くで」
「え、ちょっとどこ行くの、ユウジ!」
いきなり腕を引っ張るユウジ。
遅れてきた先生とすれ違いざまにホームルーム始まるで!と言われたけど、ユウジはそんな先生には目もくれずどんどん廊下を進んでいく。
「ユウジ?」
だけど、チラッと見えたユウジの表情が見たことないくらい真剣だったから、そのあとはなにも言えなかった。
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