「ちょっとは落ち着いたか?」

「・・・うん、ありがとうブン太」





雅治とよく来た公園。雅治と並んで座ったベンチに今はブン太と二人で座る。正直あまりここには来たくなかった。だけど、せっかく連れて来てくれたブン太文句なんか言えない。

雅治と、ここで沢山話したな。夏はアイスを二人で食べて。冬には体を寄せ合って。思い出に、なっちゃうのかな。せっかく引っ込んだ涙がまた瞳を覆うように溢れてくる。





「名前?」

「ごめっ、」

「無理すんな。事情はよくわかんねえけど、辛かったろぃ。また落ち着いてからゆっくり話せばいいからさ」

「・・・・うんっ」





――――――――――





「ふーん、そういうわけね」

「・・・うん、だから、もうっ」





頑張ったな、と頭を撫でてくれるブン太。優しい、本当にたくさん助けられた。

前に一人だけ訳を知ってる友達に丸井くんと付き合えばいいのにって言われたことがあったっけ。自分でもたまに、本当に時々思うことがある。





「ブン太のこと、好きになればよかったっ」

「っ、」

「そしたら、きっと、もっと幸せに」


パチン


「ブ、ン太?」

「そんなこと、言うなよい」





なんで、なんでブン太が泣くの。ブン太に叩かれた頬を押さえるけど、全然痛くなんかなくて。変わりにブン太の涙に私の心がズキズキ痛むのがわかった。





「お前は仁王が好きなんだろ?どんなにひどいことされても、冷たくされても、仁王のことが好きだからたくさん泣いて堪えてきたんじゃないのかよい」

「・・・っ」

「なのに、なんで最後にそんなこと、言うんだよ!それじゃ、俺はっ」

「ごめっ、ブン太・・・」

「・・・ほっぺ、叩いてごめんな?」

「ううん、私こそ変なこと言ってごめん」





ブン太を好きになればよかったなんて、なんてひどこと言っちゃったんだろう。私がどんなに泣いてもブン太は文句なんかいわずにずっと支えてくれたのに。

私が雅治を好きだから。それだけの理由でブン太のことたくさん振り回して。それなのに、私。





「本当、ごめん」

「気にすんな、もう自分の気持ち見失うんじゃねーぞ?」

「・・・うんっ、ありがとう」

「だから気にすんなって!たくさん泣いて喉渇いただろい?なんか買ってくる」





くしゃっと頭を撫でてから笑顔で離れていくブン太に感謝の気持ちでいっぱいだった。幸せは続かなかったけど、それでもここまで頑張れたのはブン太が居てくれたからだよ。ありがとう、ブン太。





「もしもし、仁王?ちょっと話があるんだけど」





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