HAPPY BIRTHDAY YUKIMURA


今日は朝からたくさんの人に声をかけられた。



「精市、今日誕生日だろう」

「蓮二、覚えててくれたんだ」

「む、当たり前だろう!俺らがお前の誕生日を忘れるわけなかろう!」

「ふふ、ありがとう真田」

「これ、前にこの画集欲しがっていただろう?俺と弦一郎からだ。」

「え、いいのかい?高かっただろう」

「それは、精市の気にすることではない」

「ありがとう、大切にする」



みんながたくさんのおめでとうをくれた。



「幸村くん!今日誕生日だろぃ?ケーキ焼いてきたんだ!」

「本当に?ありがとう。ブン太のケーキは本当おいしいからすごく嬉しい」

「や、やめろよぃ!照れるだろ!」

「幸村俺からも。すまんたいしたものじゃないんだけど」

「そんなことないよ。ありがとうジャッカル」



「幸村、ん」

「仁王、くれるの?」

「プリ」

「仁王君!プレゼントなんですからそんな渡し方したらだめですよ!」

「いいんだよ、柳生」

「本当すみません。あ!あとこれ私の趣味で申し訳ないんですが幾つか本を見積もったので、差し上げます」

「ありがとう。さっそく読ませてもらうよ」



「え!幸村部長誕生日今日だったんスか!?」

「赤也、お前まさか忘れてたのかよ」

「ち、違うんスよ!昨日仁王先輩に部長明日誕生日っスよね?って言ったら明後日だって!」

「ピヨ」

「お前また騙されたのかよ!何回目だよぃ!」

「ひどいっスよ!部長!忘れてたわけじゃないっスからね!ちゃんとプレゼントもあるんで!明日持ってくるんで!」

「ふふ。わかったよ、赤也。楽しみにしてる」



相変わらずなブン太や、いつも通りの赤也。みんなのおめでとうは本当に嬉しい。去年は病院だったから、久しぶりに学校で祝ってもらえて余計かな。



「そうだ、蓮二。名前は?」

「屋上に行くと言っていたぞ」

「全く!今日は幸村の誕生日だというのにあいつはなにをやっておるんだ!」

「まあまあ。いつものことだろぃ?」

「そうっスね!」



だけど、やっぱり君がいないと物足りないなんて思ってしまう俺は我が儘なのかな。



「ごめんみんな、行ってくるよ」

「ああ、俺達も教室に戻るとしよう」

「体調悪いから保健室行くなり」

「仁王君!サボりはいけません!」



仁王も懲りないなあ。ちゃんと授業でないと放課後わかってるね?と念をおしたら、拗ねてたけどちゃんと教室に向かったみたい。
幸村はサボる癖になんて聞こえたけど、今日は聞こえないふりをしてあげた。

自分でも足取りが早くなるのがわかる。屋上に君がいるってわかっただけで心拍数が徐々にあがりだす。

みんなからもらったプレゼントの入った紙袋を握りしめて屋上のドアを開けた。



「名前!!」

「早かったね、精市」



瞬間、テニスバッグもプレゼントが入った紙袋も手放して名前に思いっきり抱き着いた。



「精市、苦しいよ」

「 知らない」

「もう、」



ちょっと困ったような声も、微かに香るシャンプーの香りも、この温もりも、伝わる心臓の鼓動も全部が愛しい。心から好きが溢れ出す。



「会いたかった」

「ふふ、私も」

「なんで朝会いに来てくれなかったの」

「ごめんね。どうしてもここで会いたかったから」



私達が出会った場所で。と、呟く名前は本当にかわいい。可愛すぎて可愛すぎてどうにかなっちゃいそうなくらい。



「精市」

「なに?」

「誕生日、おめでとう」

「っ、ありがとう!」



思わずぎゅっと抱きしめた腕に力を込めると、名前も背中に手を回してくれた。ああ、幸せ。本当に俺は幸せものだ。それから一回名前から離れて少しの間見つめ合う。



「生まれてきてくれてありがとう。大好きだよ」

「俺も大好き」



そのまま二人の唇が静かに重なった。


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