卒業(仁王と柳生の場合)
※夢じゃありません
「仁王君!明日は卒業式ですよ!?何のために早く学校終わったと思ってるんです?その前に、どこにいくんですか!」
「 プリッ」
「はぐらかさないでください!」
いつもに増してうるさい柳生を今は適当にはぐらかして、柳生の手を引く。まだなんか言ってるけど、とりあえず無視じゃ。
ずっとタイミングを考えとった。きっと明日は二人になる時間なんてない。後輩や女子に揉みくちゃにされることはほぼ決まりきっとるし、その後にはテニス部の集まりがある。
だから、きっと今しかないんじゃ。
「仁王君っ、もしかして」
「 ついたなり」
「ここは、」
「 久しぶりじゃのう」
ついた場所はゴルフ部の練習場。
「"柳生比呂士、お前さんの名前だろ?"」
「 え?」
「なにほうけちょる。お前さんの番ぜよ」
「え、ええと。"私はまだテニス部に入ると決めたわけじゃありませんが"」
「"このテニスコートってやつはお前らが使うゴルフコートに比べて遥かに狭い"・・・
「・・・・俺と、俺とダブルス組んでみんかのう」
「っ、ええ、よろこんでっ」
「 セリフ、間違ってるぜよ」
「にお、くん」
「柳生、今まで沢山迷惑かけたのう」
「っ、」
「いつも辞書貸してもらってすまんかった」
「部活サボってるといつも探させてしまって」
「 ・・・、」
「テスト勉強もつき合ってもらったし、合宿時なんて荷物の準備をわざわざ家まで来て用意手伝わせてしもうた」
あの時のことを思い出して少し笑う。
「あの時は本当に来てくれるとは思わんかったぜよ」
"準備手伝って"なんて半分情報だったのに、本当どこまで紳士なんか。
「本当すま、「仁王君」 」
「あなたは何を勘違いしてるんですか」
「 え?」
「私はテニス部に入部して3年間、一時だって楽しくなかったことなんかありません。」
「 っ」
「毎週のように仁王君が辞書を借りに来ることだって。サボっている仁王君を校内中探し回ることだって。仁王君の全然進まないテスト勉強を手伝うことも、合宿の準備を手伝うことも」
「私にとっては楽しくて、充実して、とても大切な毎日でしたよ」
「 、柳生にはやっぱりかなわんぜよ」
時々不安に思うことがあった。
あの時は直感で柳生をテニス部に誘ってしまった。だけど、部活が始まれば俺は柳生に迷惑ばかりかけていた。だから不安だった。
柳生の本当にやりたいことを奪ってしまったんじゃないかと。
「仁王君」
けど柳生にはそんな俺の考えまでお見通しじゃったみたいやのう。
「私はあの時、中学生活を仁王君に預けようと決めました。仁王君だから預けよう決めたんです。」
「その決断は間違っていなかった。」
やっぱり。そうやって柳生は
「だってあの時の私達のおかげで、今の私があるのですから」
俺の心を一瞬で奪ってしまうんじゃ。
「や、ぎゅ」
「だから、言ってほしいのはそんな言葉ではありません」
「 っ、あり、がとう」
「私の方こそ、感謝しています」
柳生、俺もあの時の決断は間違っていなかったみたいじゃ。
「ふっ、やぎゅ泣きすぎ、ぜよ」
「仁王君に言われたくありませんよ」
やっぱり柳生は、
「仁王君、」
「なんじゃ?」
「これからも、よろしくお願いしますね」
俺の最高のパートナーじゃ。