HAPPY BIRTHDAY RYOMA


「リョーマ!おはよう!」

「なんだ名前か」

「なんだとはなんだ、なんだとは!」

「朝からテンション高すぎ」



朝から厄介なのに絡まれたとため息をつきながら、顔をマフラーに埋めた。なんだ、このテンション。毎回全然ついていけない。なのに毎日毎日懲りずにハイテンションで話しかけて来る名前。正直、そのテンションも嫌いじゃないわけで。



「ええええ!だって、今日クリスマスイブだよ!?テンションも上がるよー!」

「  はあ。クリスマスとか寒いだけじゃん」

「そこもいいんじゃん!それに今日は「おっはよー!」あ、桃先輩!おはようございます!」

「おはよう!名前今日もテンション高いなー!越前も見習えよな!」

「二人ともうるさい」

「なんだとー!かわいくねえやつだぜ!あ、名前ちょっと話があるんだ!」

「なんですか?」

「ここじゃちょっと、な」



だから、こうやって桃先輩と名前が仲良さそうに話すだけでちょっとイラッとしてしまう俺はまだまだ子供だと思う。しかもなにこの俺邪魔みたいな雰囲気。



「じゃあ俺先行くっすね」

「え、リョーマ!?」

「おう、気きかせてもらって悪いな!」

「うっす」



ああ、イライラする。名前と二人きりになろうとする桃先輩にも。楽しそうに話す名前にも。それに今日は・・・まあいいや。




―――――――




ついてない。授業中うたた寝してたら先生に頭叩かれるし。欲しかったパンは売り切れてて買いそこねるし。なにが一番苛立つって、今日ずっとそわそわしてる名前。なんだよ、桃先輩となにかあったのかよ。
自分でもビックリするくらい気になる。こんなに一つのことを気にするなんて滅多にないのに。



「部活、か」



正直行きたくないけどテニスはしたい。休むわけにはいかないし。憂鬱になりながらも部室に向かう。




―――――――



(はあ、)

ガチャ


「ちーっす」



パンパンパンパーン!


「「「「ハッピーバースデイ越前!(リョーマ!)」」」」



「え、ええ?」

「おちび!何突っ立ってんだよ!」

「さあ、入れよ越前!」

「遅かったな、越前」

「越前、誕生日おめでとう」

「全く、待ちくたびれたぜ!」

「  フシュー」

「何照れてるんだ、海堂」

「おめでとう越前!これうちの特別券!ぜひ食べにきてよ!」



「誕生日おめでとう!リョーマ!」


「なん、で?」

「なんでって、リョーマ誕生日忘れちゃったの?」

「名前何言ってんだよん!おちび嬉しくて感動してんじゃないの!?」

「ふ、これは新しいデータだな」

「じゃあさっそくケーキ食おうぜ!」

「お前は食い物のことばっかだな」

「なんだと!やんのかマムシ!」

「ああん!?」

「二人とも、やめないか!」



ビックリしているうちに、どんどん展開が進んで、みんなより少し大きいケーキを渡された。



「どうしたの?リョーマ。元気ないよ」

「いや、大丈夫。準備いつからしてたの?」

「朝、桃先輩からやるって聞いたんだよ!危うくおめでとうって言っちゃうところだったよ!」

「なんだ、よかった」

「え?ごめん聞こえなかった。なに?」

「なんでもない」


「ふふ、変なの」

「うるさい」

「誕生日おめでとう」

「  ありがとう」



まだ言えないよ。桃先輩が名前に告白したかと思ったとか、付き合っちゃったんじゃないかとか。

名前のこと、好きって気づいたなんて。


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