そんな二人のやり取りを見つめながら、嵐は諦めたようにため息を吐き出した。
どうやら大体の見当はついた。たぶん、自分はこの状況を理解できていると思う。だから、自分が口出しをすることではない。そう分かっているのだが――
「あのさ…」
嵐はゆっくりと重い口を開き、少女に話しかけた。
「俺たちが口を出すことじゃないと思うんだけど、もう少しだけ待ってあげることは出来ないかな?このままだと、この子はずっとここに想いを残すことになると思うんだよね」
「……」
「あんたも分かってるんだろ?だから、そんな辛そうな顔してるんだろう?」
嵐がそう言った途端、少女の黒い瞳がかすかに見開かれる。
女の子は不安そうに嵐と少女を見つめている。そんな女の子の手を、明良がやさしく引っ張る。
「ほら。早くしないと陽が暮れちゃうぞ」
「でも…」
「お姉さんのことは、あいつにまかせておけばいいさ。俺たちはその間に……、な?」
クローバーを指差しながらニカッと笑った明良を見て、女の子は悪戯っ子のような笑みを浮かべるとこっそり頷いた。二人してそろそろと身をかがめ、慌てて四つ葉さがしを再開する。
少女は、明良と女の子の行動に呆気に取られたようだった。それから嵐の顔をまじまじと見つめると、
「まったく、困ったものですね」
そう言って苦笑した。
それから、四人で四つ葉をさがした。
女の子と少女はともかく、いい年をした男二人が四つん這いになって草むらをがさがさと掻き分けている様子は、傍から見たらなんとも滑稽な姿だろう。
いよいよ夕陽が最後の光を残して西の空に沈むという頃、嵐がいきなりすっくと立ち上がった。
「なんだなんだ?どうしたんだ?」
明良が驚いたようにきょろきょろと視線を動かすと、嵐は無言で女の子に近づき、女の子の目の前に一本の四つ葉を差し出した。
「はい。これは君のものだよ」
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