紫歩の声に少年は、驚いて訊いた。
「え、そうなの?」
「予見詩人やら最長老はその辺をえらく気にしているから、見つかったらただじゃ済まないかもね。」
実際月花以外が触れることをあまり良い顔しない彼らのことだ、少年を見つけたら怒るだけじゃ済まないだろう・・・・・。
紫歩の言葉に、少年は慌てて枝から降りた。
「今のナイショね?」
紫歩は怪訝そうな表情を浮かべたが、とりあえず頷いた。
央雅の敷地に入ることが出来る中で、この話を知らない人間は珍しかった。
“央雅 月花”は花陰再来と謳われた術士で、央雅に仕える人間が訊いたことないとは珍しい。
月花とこの梅の木はあまりにも有名だった。
「央雅の人間じゃないの?」
不信そうな紫歩の表情に、少年はにっこり笑っていった。
「あぁ、俺ちょっと変わっててこの村で育ったんじゃないから。」
「この村の出身じゃないの?」
「母さんがこの村出身。俺は外で生まれたんだ。小さい頃一度この村に来たらしいけど、覚えてない・・・・・。今日から西條。」
「今日から・・・・・。」
ポソリと呟いた紫歩の言葉を聞いていなかったのか、少年は続けた。
「本当なら死んでるはずだったんだけど、能力高かったから生きて、西條に引き取られるんだって。」

ドクン

少年の言葉に、紫歩の心臓が跳ね上がった。
似ている、と思った。
「・・・・・西家出身なの?」
紫歩の言葉に少年は少し思案してから言った。
「元々は違うけど、家が絶えたらしいから。」
だんだん激しくなる動悸を抑えながら、紫歩は少年の言葉を聞いていた。「それに俺基本的に“外”での仕事が中心になるだろうから、『どこでもいいんじゃないか?』って。」
少年の言葉を聴きながら、紫歩はだんだんうつむいていった。
心臓は激しいくらいに暴れている。
そんな紫歩に気づいているのかいないのか、少年は無邪気に聞いてきた。「お姉さんの目って自前?」
突然の話題の転換に、紫歩は驚いて顔を上げた。「え?」
「だからその目の色。」
再度少年に聞かれて、紫歩は困ったように微笑みながら言った。
「そう、黒髪に碧眼って珍しいんだけど、突然変異で・・・・・」
紫歩の言葉に、少年は目を輝かせていった。

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