Piece26



Piece26



 集団が一つの場所に固まって生活する場合、ある程度の規律がなければ生活は成り立たない。地上であるならその規律にそぐわない者は逃げ出しようもあるが、遥か上空を悠然と飛行する一つのコミュニティの中にあっては、逃げ出したところでその先は死である。規律と命など比べるまでもなく、畢竟、彼らは粛々と規律に従うことになるのだった。
 運航のために必要な人員は昼夜交代制であり、しかし替えの効かない人員というのも存在する。動力の安定に努めるタウザーがそれであった。彼の魔法の技能はさすがに神殿騎士団というだけあって、他の追随を許さない。後方支援タイプだと言われても、能力や威力は市井のそれとは大いに桁が違った。そのため彼の交代要員というものはなく、一日の大半を動力炉で過ごし、夜はアインに任せて睡眠を取るという生活を繰り返している。
 一方のラオコガは船長という肩書はあっても仕事のない立場であり、平時は出番が少ないことをいいことに、舵にもたれて船の旅を楽しむか、そのへんの機械をいじっているかのどちらかであった。もちろん、後方に控えるアインに青筋が浮かぶことは言うまでもない。
 巻き込まれた形で乗り込むこととなったゴルたちは、それぞれの技能を生かして自らの生活域を作りだしていた。特に医者としての技能も持つワイズマンとロマは重宝され、仕事用と称していくらか大きな個室を与えられている。あまりふらふら出歩いて口を出さないでほしいから押し込めた、という本音を隠しての配置だと言う声もあったが、人間が生活する以上、医療技術は無視出来ないものであり、そのための場所が必要なのもまた事実であった。
 ゴルは機械工としての技術をいかんなく発揮し、ラオコガに雲上人と言わしめた存在を飛空艇の乗務員たちにも強く知らしめた。ゴルの噂は案外に広く知れ渡っていたらしく、その名を聞いた者は嬉々として付き従い、機関室の長は誰がリーダーかわからないとぼやいている。仕切ったからには徹底的な仕事ぶりを見せるため、慌ただしく出発せざるを得なかった飛空艇の未完成な部分や粗の目立つ所は少しずつ改善されていった。
 ここまではおおむね歓迎された事例ではあるが、ヤンケの場合は多少なりとも頭痛の種にしている人物がいた。ヤンケは見たことのない飛空艇のシステムに大きく好奇心を刺激され、駄目と言われればやりたくなる人間の本能そのままに侵入しては探っていた。その度にシステムを管理しているアインが悲鳴をあげ、次こそはと防御壁を作り上げるが、いとも簡単に突破されてしまう。そんな事を繰り返しつつ、ヤンケはこそこそとシステムの中に自分の道を作り、アインがそれを見つけては壊していった。
 傍目にはわからない静かな応酬の中で、侵入者であるはずのヤンケの方がシステムに精通してくるのだから、アインとしては面白くない。しかし、自分と同レベルの場所でやり取り出来る人間がいることに楽しさを感じないわけではなかった。どちらかを天秤にかけても傾くことがなく、情勢は常に変化する。それがアインを混乱させていたことは言うまでもない。

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