Piece24
Piece24
ゴルは息をつき、言葉を切ってから続きを話した。
「……わしが着いた時には大地が抉り取られたようになっとった。……と言うより、それこそ村のなれの果てと言うべきかね」
ロマは言葉を失い、あのワイズマンでさえも顔をしかめている。
共に生活する以上、と半ば強引にゴルが話して聞かせたことのあるヤンケも、不快そうな顔を隠せなかった。
ゴルは低い声で続けた。
「草一本、石ころ一つありゃせん。文字通り土だけの窪地なのに、妙に臭い。……あの匂いだけは今でも忘れられん。地下で長いこと暮らしとると、尋常じゃない死体や墓場に出くわすこともあるがね、どれに会っても、あの時ほどじゃないと比べてしまう」
沈鬱な空気が支配する中で、場の流れを変えるようにワイズマンの張りのある声が響く。
「あなたはどうしてそこに?」
「父親はわしの弟子じゃった。よく家族の話は聞かされていてな、亡くなったと聞いて、花でも手向けさせてもらえんか頼みに行ったら……花どころじゃあない」
「でも、それは本当にギルがやったんですか? 他の誰かの襲撃とか」
ロマの質問に、ゴルは無情にも首を振る。
「それはない。あいつ自身も後でわしに見せてくれたことがあったがね、同じことになったよ」
黙り込むロマに構わず、ゴルは記憶を掘り起こしていった。
「あの時は鳥の死体を拝借したが、あれが生きた人間だったならと思うとな……やりきれん」
ギレイオを保護して体力の回復を待ち、ある程度の会話まで出来るようになった時、ゴルもロマと同じ仮説をたてて尋ねたことがあった。十歳になるかならないかの少年が、そんな魔法を使えるとはどうしても思えなかったのである。
ただ、今になって思うのはそれはゴルの希望的観測に過ぎなかったということだ。
目の前で鳥の死体を白い粉にまで分解したギレイオの魔法は、持ち主の年齢や出自など無視をした、遥かに残酷な力であることをゴルは思い知る羽目になった。
そしてそんなことをさせた自分をひどく恥じたのだった。
「……今、粉に分解と言いましたが」
「言ったな。村の時は全部消えていたと言ったから、そう聞くんじゃろ? ありゃギレイオが抑制をかけたんじゃないかと思う。抑え込んだところで、融通の効く力でもなかったということじゃな」
これにはワイズマンも押し黙った。
想像以上にむごいというのが、ワイズマンとロマの一致した意見であった。彼らは簡単に「故郷にはいないのでは」と考えていたが、現実は更に冷徹な答えを下す。
「……一応聞きますが、村の時はセーブが働かなかったということですね」
「何故かと聞きたいのか?」
「先生、それは」
ロマが思わず口を挟むが、ワイズマンは一瞥をくれただけで無視をした。
「自主的に行ったという可能性は?」
- 393 -
[*前] | [次#]
[しおりを挟む]
[表紙へ]
0.お品書きへ
9.サイトトップへ