Piece9



Piece9



 家の中は綺麗なものだった。後でロマがサムナに小声で教えてくれたのだが、掃除などの一切の家事はロマが行っているのだという。だから綺麗なのだ、という結論に落ち着くが、つまりはワイズマン一人では散らかしっぱなしということなのだろう。
 入ってすぐの部屋には大きな机と大きな暖炉、そして四方の壁全てがそなえつけの本棚で、収まり切らなかった書物が隙間という隙間に押し込まれ、それでも入りきらなかった書物は床に積み上げられていくつもの塔を形成している。
 大きな机の上には走り書きだったり丁寧に書かれたりしてはいるが、総じて読みにくい字で書かれた紙の束が散乱していた。
 それらの隙間に筆記用具やらコップやら椅子やらがあるが、生活のための場という空気は感じられない。少し広くなった書斎、という印象があった。奥にも部屋があるようで、ギレイオいわく、そこが例の施術室なのだそうだ。そのうちにサムナもギレイオも世話になる部屋である。
「散らかっていてすみませんね。優秀な助手がどこかへ遠出していたようで」
 ねえ、と言ってワイズマンはロマに頷きかける。罪滅ぼしよろしく、せっせと片づけに励んでいたロマはぎくしゃくと頷いて「すみません」と答えた。
 あらかた片付いたところでワイズマンは革張りの立派な椅子に腰かけ、二人にも近くの椅子に座るよう勧める。ロマには勿論、お茶を用意するように言いつけ、どこからそんな道具を取り出すのかと思えば、暖炉の脇にひっそりと佇む戸棚がどうやら炊事道具や食器類を置いてあるらしく、そこを開いて手際よくお茶の用意をする。本当に、生活感は添え物のようにそっとあるだけだった。
 目の前に座ったワイズマンはくつろいだ様子で足を組む。
 対して自分たちは尋問される罪人のようだ、と何の感慨もなくサムナは思った。というのも、ギレイオがワイズマンを睨み付けながら緊張を解かないからである。臨戦態勢というより、これはいつでも逃げられる態勢だ、と長い付き合いからサムナは感じ取っていた。
「……また椅子が立派になりましたね、ワイズマン」
「自分の頑張りへのご褒美です。それにしても、君の心の籠ってない敬語は相変わらずですねえ。ぎこちないのも相変わらずで安心しました」
「それはどうもありがとうございました」
 今のはいつもなら、確実に殴りかかっているところだろう、とサムナはいつになく丈夫な相方の堪忍袋に驚いていた。
 それほどワイズマンが強く、見た目にはわからない何かが備わっているのか。
 ロマが入れたお茶をそれぞれに渡し、横に座るのを待ってから、ワイズマンは話を切り出した。
「それで、頼みとは何でしょう」
「……俺とサムナの二つあるんだが」
「敬語」
「…………あるんですが、サムナの方をまず優先して診てほしいんですがいかがですか」

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