Piece4



 ギレイオも知らない間に追加注文していた酒を飲みつつ、老人は頷いた。
「どれくらいのもんだい」
「かなり古い。ビンテージがつくぐらいはある」
「それなら、おれんとこにゃねえ。リッタの店だ。記憶力はいい方かい」
 ギレイオが頷くと、老人はまるで暗記してたかのごとく、酒場からリッタの店までの道程をつらつらと述べ始めた。情報を全て己の頭に入れているからこそ、老人は自身の価値を高めているらしかったが、他にも同じような情報が彼の小さな頭の中にあると思うと、驚嘆に値する。怪物めいた目玉は伊達ではないようだ。
「……で、三つ目の角を右に曲がって左側の建物ん中だ。ほれ、料金」
 ギレイオは指定された代金を払いながら、「もう一つ」と聞く。
「この町以外の情報にも精通してるか? 例えば神殿騎士団の動向とかさ」
 老人は口角を上げて笑う。
「なんだい。後ろ暗い身かね」
「俺にはそのつもりはないんだけどね。どうだい」
「アクアポート襲撃の際に、大多数が向かったようだね。あとはいつも通りなもんだが、どっかの企業が神殿騎士団へ頻繁に、重討伐指定の照会をしてるって噂がある。ややこしい名前なんで忘れちまったがね」
「情報屋がそんなんでいいのかよ」
 手の動きだけで料金をせびる老人へ、ギレイオは渋面を作り出しながらも、金を払った。金銭にはがめついが、そのやり取りは正確に、あとくされなく行うのが、お金との正しい付き合い方だというのがギレイオの考えだった。
 再び手にした代金を嬉しそうに数え上げ、老人は言った。
「いいんだよ。あんたには察しがついたんだろ」
 まあな、とギレイオは答えて、ジギーに向き直った。
「まーだ追いかけっこやってんの?」
「俺としては、鬼を捕まえて土産までやったつもりなんだけどな。平和的な一般市民の感覚から言ったら、そうとう太っ腹だぜ?」
「お前が平和的な一般市民なら、今ごろ神殿騎士団なんていらねえや」
 頬杖をついてぼやくジギーに、ギレイオは「違いない」と言って続けた。
「とりあえず、連れもいるから俺の車を優先させてもらう」
「連れ? へえ、お前がねえ。人間なの?」

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