Piece4



 徴収すべき相手は目の前にいるのだ。あらかた言いたいことは言えたし、これ以上の悪目立ちは避けたいところだった。
 老人が座っていた席に腰を落ち着け、ジギーにも座るように言う。
「まあ、取れるもん取れたらチャラにしてやる。出来るよな?」
「うーん……」
 ジギーは今度こそ、本当に参ったようにうなり、頭をかいた。
「いやね、オレっちもちょーっと困ってるわけさ」
 どうやら嘘ではないらしい、とギレイオは勘付いて、関係なさそうな顔をして離れようとしている老人に声をかけた。
「こいつと何、話してたんだ」
「知らん」
「さっきの侘びだ。一杯おごるよ。それと俺も商談したいんだけどね」
 マスターを呼んで、老人が飲んでいた酒と同じものを注文する。それがカウンターに運ばれてくると、老人は頑なだった態度を和らげ、ギレイオの隣に腰掛けた。
「で? 何を話してた」
「バギーを直せる奴はいないか、って話さ。何人か心当たりはあるが、取るもんは取る、って答えたところであんたが割り込んできた」
 バギーと言いながら、ギレイオはジギーを振り返る。
「ざまみろ。故障か」
「労わるって言葉を覚えとけよーギレイオ。いつか刺されるぞ」
「やり返してやら。で? 見つかったのか?」
 ジギーは肩をすくめて、かぶりを振ったが、目の前にいる人物が何者であるかを思い出したようだった。
「あ、お前修理してくれよ。な? ここで会ったのも何かの縁ってやつじゃねえか」
 どういう縁だと言い返したくなるも、これで堂々と料金を請求する大義名分が出来た。
 ギレイオは頭の中でそろばんを弾き、彼からすれば妥当と思われる料金をはじき出す。
「なら、修理代とこないだ踏み倒した料金、それに利子込みで……これで、どうだ」
 指で示すと、反射的にジギーは値切りに出る。前もそうだった、ということを思い出して、少しだけ値を下げた。
 それを繰り返すこと数回、二人の納得がいく値が算出される。もとから値段の設定を高くしていたギレイオからすれば、必要な分に小遣いまで貰ったような気分だった。
 ジギーと再会した時とは一転して嬉しそうな顔になり、老人にかける声も活き活きとし始める。
「じゃあ、俺の商談だ。古い車の部品を置いている店はあるか」

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