Piece25



「……俺のこと、そのまま恨んでいてほしい。なかったことにだけはしないでくれ。俺はそれをずっと覚えていく」
 ラオコガはふっと表情を緩めた。
「自分より年下の子供に背負わせるにはちょっと重すぎる荷物だと思うよ。俺はね。……でもまあ、そう言ってきたら一つだけ無茶をふっかけようとずっと待ってたんだ」
「無茶?」
「そう。俺の義足を作ってくれ。どれだけかかってもいい。お前にとって無理難題なら尚更いいな。ちなみに費用も材料もお前持ち」
「……怪我人にふっかけるなー……」
「なんなら丈夫な杖も作ってくれて構わない」
「二つになってるじゃねえか」
「これらはあくまで一つの無茶だよ。右足を失くした生活を面白おかしいものにしてくれっていう頼みの派生だ」
 ギレイオはしばらく考えた後に、小さく息を吐いた。
「わかった。そんなんでいいのか?」
「俺にはこれがいい」
 目の前の少年が、沢山の人が立つ輪の一員に入ることを拒否せず、皆の中に帰ってゆくことを否定しないのなら、ラオコガにとってはそれで充分なような気がした。恨みつらみをずっと持ち続けていることの苦しさは、年相応にわかっているつもりだった。
 ギレイオは次いで、タウザーに目を向ける。タウザーは真摯にその瞳を受け止めた。
「……今度はびくつかないんだな、お前」
「胆が据わったんだ。あれから何年も経っているからね」
「この前会った時はそうでもなかったぞ」
「だって、忘れられていると思っていたし……なにより、俺は君に会うのがとても怖かったんだよ」
「……さすがに出会い頭に取って食ったりはしねえよ」
「そうじゃなくて」
 タウザーは手を振って否定した後、穏やかな顔に何かを思い出すような表情を浮かべた。
「……俺はね、神殿騎士団の裏方なんだ。子供の時、ヒュラムさんたちと一緒に君の所へ行った時から、今もずっと」
 どこかでその言葉を予想していたギレイオは、すんなりとタウザーの告白を聞き入れることが出来た。
「……裏方って?」
「無属性方程式魔法を使う子供を見つけること。そして監視し、可能であれば管理すること」
「動物にでもなった気分だな」

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