Piece4



 わかった、とサムナは頷いた。
「もし何かあったら、車なんか捨てて逃げろ。自分を第一に考えろよ」
「その時の合流地点は」
 ギレイオは町の中心部へ顔を向けて、顔をしかめる。
「あー……目印になるようなもんがねえな。いいや、町の入り口で合流でいいな?」
「わかった」
 間違っても、とギレイオは語気を強めた。
「妙な事に首をつっこむなよ。巻き込まれそうになっても、逃げろ」
 これには半瞬置いて、サムナは「わかった」とだけ言った。
 不安の残る相方を残して行くのは心配で仕方ないが、今は車の修理が何よりも優先された。それ以上言い募ることはせず、サムナの左腕を背負って、教えてもらった酒場への道を辿る。
 道を進む間も、小規模な爆発が絶えなかった。爆弾魔というより、ほとんど戦争じゃないかと内心で愚痴る。とにかくタイタニアへ行くまでは、無用な厄介事を背負うつもりはなかった。
 だが、と溜め息をつく。その後は、その限りではないのかもしれない。
 爆発で飛び散る建物の破片を避けつつ、ギレイオは目的の酒場に着いた。昼間だというのに賑わっているのは、にわか仲介所として機能しているからであろう。ということは、ギレイオの目的も存外早くに達成出来るかもしれない。
 あからさまに冒険者風の男から賞金稼ぎのような女、昼間から酒をあおる老人の隣では、若い男が商売口上を垂れている。重討伐指定が復帰していればギレイオの手配書も出ているところだが、酒場の客は自身のことで手一杯なようで、彼らの間をすり抜けてカウンターにつくまで誰にも見咎められることはなかった。
「あんたも冒険者かい」
 カウンターについた途端、マスターらしき男が声をかけてくる。口ひげをたっぷり蓄えた顔つきは、酒場のマスターというよりは、猟銃でも持っている方が似合いそうだった。
 ギレイオは似たようなもんだよ、と愛想よく答えて続ける。
「ここで色んな仲介やってるって聞いたんだけど」
「そうだよ。何か飲むかい?」
「あー……じゃあ一番弱い酒で」
 何もいらないというわけにはいかない。仲介料がわりに頼むと、手際よくコップに注いで出してくれた。
 それをちびちびと飲みつつ、ギレイオは本題に入った。

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