Piece22



「ヒュラムさん! あの!」
 一部始終をとっくり聞いていたパストゥスは、要領を得ないトピアーリウスに対して的確な答えを示した。
「減るもんじゃない。見せてやれ」
「いいんですか!?」
「お前ぐらいの魔法じゃ誰も死にゃせん」
 他の二人が笑ってそれに賛同する中、トピアーリウスは困り顔でギレイオを見た。
「……本当は見世物じゃないんだよ……」
「いいじゃん、少しだけだって」
「……まあ、いいって言われたからやるけど……」
 そう言って、トピアーリウスは掌を上に向けて返す。そして握りこぶしを作ると、真剣な面持ちでギレイオを見た。
「直視したら駄目だよ」
「なんで?」
「太陽と同じ。見たいならそれだけは守ってほしい」
 今までの気弱そうな態度が嘘のように強い口調で言われ、ギレイオは自然と顎を引いていた。
 ギレイオが一歩下がり、目の前に手を掲げて影を作ったところで、トピアーリウスは再び表情を緩める。
「じゃあ、やるからね」
 途端に、握りしめた指の間から強烈な光の帯が溢れだす。まるで中に光源があり、手では抑えきれない光が漏れ出しているかのようだった。だが、ギレイオの目の前で拳を作ったトピアーリウスが何も仕込んでないことを、ギレイオ自身がよく知っている。
 溢れだした光は徐々に収束していき、拳の中へ収まっていった。外へ飛び出た光が収まるごとに拳の中は光の奔流で満たされ、血管が透けて見える。
 そして一瞬、拳に力を込めたと思うとトピアーリウスはそれを一気に解放した。その途端に太陽を真正面にいただいているかのような白い光が炸裂し、ギレイオは顔を背ける。温もりのない光は辺りの影を一掃し、掲げていた手などものの役に立たない。瞼をきつく閉じて光の怒涛が収まるのを待っていると、透かして見えていた血管が徐々に本来の薄暗さを取り戻し、トピアーリウスの「いいよ」という声が聞こえた。
 声に促されてギレイオが目を開けると、視界に飛び込んできたのは無数に飛び交う光球であった。それらは大小様々なれど、秩序だった動きで花畑を取り囲むように円を描いている。
 光球は物に触れると四散して消えた。ギレイオが意識して触ると花を散らすように消えるので、面白くて何度も繰り返した。
「すげえ!」
 ギレイオを取り繕うものなど、もはやありはしなかった。トピアーリウスは微笑みながらその様子を見守る。

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