Piece22



「すごいなと思って。だって“異形なる者”に会うことだってあるだろ?」
「そういう時は大人が相手する。お前くらいの子供も出ていく」
「戦うの?」
「だって死にたくないし」
 本当は“異形なる者”に見つかりにくい道を進む。先達たちが見出した彼らだけの道であり、それを教えてやる義理はない。ただ、戦うという言葉をそのまま鵜呑みにしそうな勢いだったので、ギレイオはもう一つの方法を教えてやった。
「あとは花を持ってく」
「……摘んだら死ぬんじゃなかったっけ」
「お前んとこのおっさんたちみたいにやれば毒は出ない。うちのとこにもああいう魔法を使えるのが何人かいるし、俺たちは平気だから。そいつに持たせてると、何も近づいてこない」
 トピアーリウスは表情の読めない顔で花畑を見やった。
「盾と矛は表裏一体かあ……」
 その言い方が大人びて見えたので、すっかり見下していたギレイオの心にわずかないたずら心が芽生えた。
「……そういやお前の仲間、皆、光の魔法使えるんだな」
 初めはパストゥスが手順を教えるために、三人かたまって採取していたが、今は散開して各自で作業している。誰の手元にも神々しい光が宿り、天上からの使いが眠りを冒涜された死者を救いに来たかのようだった。
 光力属性方程式魔法は無属性を除けば最高位の強さを誇る。その使い手の多くが神殿騎士団に属していることもあり、光の魔法は騎士団の代名詞でもあった。
「お前も使えんの?」
 どう見たところで騎士団に見えない連中が、最高位の魔法を使えるというのは充分に好奇心を煽った。無論、ダルカシュの面々とて同じことだが、見知った者と外部の者ではその意味合いが大きく異なる。
 トピアーリウスは面食らったように目を丸くしたが、数秒置いて、こっくりと顎を引いた。ギレイオの好奇心はいよいよ膨らむ。
「じゃあ、見せてよ」
「え!?」
「ちょっとだけ」
 この時、ギレイオは何の邪気もなく、せがんでいた。自分よりもいくらか年上の、それでも子供と呼ぶに障りない少年が騎士団と同じ魔法を使えるということが、ギレイオ自身の特殊性とわずかに同じ方向を向いていたのだった。村の子供たちが残酷さを求めてせがんだものとは違う、トピアーリウスに対する無意識の親近感がギレイオ本来の好奇心を刺激した。
 トピアーリウスが明らかにたじろいだのを見て、更に押し込めばいけると踏む。畳みかけるように言い募ると、言い返せないと判断した彼は遠くで作業するパストゥスに助けを求めた。

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