Piece21



「そっちは?」
 ロマは靴を脱ぎながら問うた。ずっと歩き通しだった足が解放され、不快感が解消される。
 尋ねられたヤンケは嘆息した。
「あまり芳しくありません。ギルドにも神殿騎士団にも、ギレイオさんが見つかった報告はありませんし、どこかの端末に引っ掛かるようなこともしてないみたいです。……いいのか悪いのか」
 ギレイオとサムナは追われる身だった。ならば、ギルドか騎士団のどちらかに目撃情報が上がっている可能性もあると見込んで探したのだが、情報は古いままで更新されず、大陸中のギルドや街の端末に潜り込んで探してもそれらしい人物の痕跡はない。更に、思いつく限りギレイオの行きそうな所を探してみても、やはり結果は同じことだった。
 ネットワークを使ってヤンケが探す一方でロマは地道な聞き込みを続けていたが、そちらも成果は上々とは言えない。
 やたらに有名人になられていても困るが、こうまで足跡が追えないとなると、天才的と称したロマの言い分は的を射ている。
「ロマさんの方も?」
「あれだけ人相悪ければ、目立ちそうなものなんだけどなあ……」
「……いなくなった人に凄い言いようですね……」
「まあ、それは冗談にしてもさ。近くにいないなら遠くに行ったと考えるのが妥当だろう。でも、そのための足をあいつは持っていない。この辺りで盗まれたって話も聞かないし、乗り合いを使った感じもない。そもそも金も持ってないからそれも難しい話なんだが……」
「でもギレイオさん、前に修理工として移民用のバスを使ったって言ってましたよ」
「……そこなんだよなあ」
 ロマはがっくりと肩を落とした。
「やましい連中は金の代わりに腕を買うみたいだけど、オレそっちのつてはないし。ギレイオはそのあたり上手いから」
「そういうのだとネットワークには痕跡が残りづらいですしね。残らないようにしている人もいるようですから、そうなると人の目が頼みなんですけど……」
「頼みの綱の口が堅すぎて、あれはもう聞き出せないな……」
 褒められたものではない仕事に従事している者にとって、大事なのは顔の繋がりと情報である。よって、その網に引っ掛からない人間にやたら情報を漏らすことは皆無と言っていい。中には金銭によって網の目を大きくする者もいるが、とんでもない金額を要求されるために、堅気の人間が相手に出来るようなものでもなかった。ロマはもちろん、それに太刀打ち出来るほど地下の世界に精通してはいなかった。
 ここ数日で人を探して動き回っているロマの情報は誰もが知るところになっている。そうすると、ありもしない金の匂いを感じて有象無象の情報が集まってくるものだから、いよいよ捜索は暗礁に乗り上げようかというところだった。

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