Piece19
停滞した空気が流れる。彼らの任務は達成され、今は待機中だった。その他のことに時間を費やしたことのない彼らにとって、暇とは死に匹敵するほどの脅威である。体が空くということは、するべきことを失うということであり、失った彼らに結果を出せるはずもない。つまりは存在そのものさえ危うくなる。人であるなら役割を探すことも可能だろうが、三人はその模索の仕方を知らなかった。
待機中にあたって、当面はこの任務にあたれ、と言われ、彼らは日がな一日ここに居座って作り物の庭園を眺める。エインスは一度も来たことがなく、これからも来ることはないとドゥレイは確信を込めて言えた。少なくとも、エインスには二人に出来ない模索が出来るのだろう。だから、部屋に籠っている。あれがエインスの出した方法だが、かと言ってそれを真似したところで同じ結果が自分たちに返ってくるとは到底思えない。それほどまでに、エインスとドゥレイたちは違った。
甘ったるい匂いを織り込んだ空気は長閑とは言い難く、ゆっくりと何かを蝕む毒気すら感じられた。これも少ない花の数であればマシだっただろうが、これだけの数を何の法則性もなく一か所に集めるというのはいくぶん、暴力的な面も垣間見える。
その匂いの元へ水を与え続ける行為とはなんだろうと、ネウンは考えた。
ずっとその背中を見つめているが、追いかけていた時よりもその意図はさらにわからなくなっていた。それはドゥレイも同じことで、だから、答えを得るつもりでも二人はここで監視の任務にあたっている。
二人の探るような視線を感じないわけではない。しかし、相手にしようとも思わなかった。問われたところで答えがないことを、二人以上に当人は知っていたからである。答えを失った中身から響くものはなく、自然と声を出す機能も眠ってしまった。呼び覚まそうという気も起きなかった。ただ、目と耳と体が正常に機能していることだけが、今の彼にとっては大事なことだった。
サムナはじっと水の先を見つめ、ホースの口を持つ手に力を込めた。
Piece19 終
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