Piece17
やがて、扉の仔細も掴めぬ遠くの方で光が消えた。それから少しして、また別の場所の光が消える。
間隔を置いて消えるそれは、並んだ櫛の歯を抜くように、ぽつりぽつりと暗闇の間隙を生み出していった。
そして、光はただ一つの扉を灯すのみとなる。
「あそこだ」
それは階段口から少し離れた所で、サムナが先を行き、後からラオコガとタウザーが続いた。
扉は重厚な金属製で、大きな槌や剣ではびくともしなさそうだった。しかも、扉には取っ手どころか鍵穴もなく、もちろん引いて開けることも出来なければ、押しても開けられない。壁にはめ込まれているかのような様相で、じっと侵入者たちの前に立つ。
サムナは手で扉に触れ、その厚さや材質を推し量った。普通の扉なら体当たりでこじ開けることも出来そうだが、この扉は飛びぬけて厚い。力押しを繰り返せば何とかなりそうでも、そんな時間はなかった。
サムナの横からタウザーも手を伸ばし、扉に触れる。もう片方の手にはあの光球が浮かんでいた。
「魔法か?」
ラオコガが問う。タウザーは溜息をついて、扉から離れた。
「多分。魔法の形で開けるんだと思うけど……」
「形?」
サムナも離れて、扉を見据える。
「鍵を開ける時、その鍵穴と、中の部品の形にあった鍵でないと開かないだろう? これはそれを魔法で代用したものだと思う」
「開けられそうか?」
タウザーは微かに眉をひそめた。
「どうかな……きっと、ここに泊まる人にはその形を教えているはずだよ。ただ、この地下は貸金庫みたいにして使われているようだから、秘匿性を重視すると思う。この扉の鍵の形を知っている人が、俺はそんなにいるとは思わないし、こじ開ければ何かしらの代償がつくと思った方がいいんじゃないかな」
でも、とタウザーは渋面を苦笑に変えた。
「ラオコガはそれでも開けたいよね」
「……目的がここだからなあ」
同じく苦笑で応えて、ラオコガは仲間を振り返り、上に戻るように言う。タウザーの言う「代償」がどれほどのものか、皆を巻き添えにしてまですることか、と考えた時、それなら自分たちだけでやればいいとラオコガは考えた。
初めは渋ったものの、そうなった時に自分たちが成す術を持たないことを彼らは知っていた。
- 291 -
[*前] | [次#]
[しおりを挟む]
[表紙へ]
0.お品書きへ
9.サイトトップへ