Piece15



「あなたはあの相方といつも一緒のような気がしたから」
「まあ……概ねその方が多いが」
「会話に不自由しそうだもんね、あなた。代わりにギレイオが喋るってことかしら。確かに舌はよく回りそう、あの人」
 自論に頷き、アインは紙袋を抱え直す。
「それは?」
「出前。私、食堂で働いているから。あなたたちがさっき話していた所で」
 そうか、とサムナは淡々と頷き、手を出した。
「持とう。重そうに見える」
 アインはきょとんとして目をしばたかせ、差し出された手におそるおそるといった体で袋を預けた。
「……ありがとう」
 届け先を教え、アインはサムナに同行しながら不思議そうな視線を送った。
「何かあるのか?」
 アインは首を傾げて問う。
「……私くらいの年齢で、働いてるって言うと大体の大人は親のことを聞くんだけど、あなたは聞かないんだなと思って」
「……お前ぐらいの年齢で働いていた子供なら、おれも知っているから驚きようがなかったんだが、そうか、親か」
「何を納得したの?」
「おれにはそこまで考えることが出来なかった」
 アインが疑問に満ちた目を向けるが、サムナは答えなかった。
 発掘作業の作業員が詰める小屋に出前を届け、その場で別れようとするサムナの手を引っ張り、アインは「ちょっと待って」と言う。
「暇なんでしょ? 連れてってあげる」
 会話の脈絡が掴めず、益々不思議そうな顔になるサムナの手を引き、アインは歩き出した。
「この前、放棄された街の話をしたでしょ。誰かが直し続けた神殿の話」
 彼らが飛空艇を造っている場所だ。
「それが一体……」
「あそこにはね、直されなかった神殿もあるの。あなたなら興味があると思って」
 どうせ宿に戻ったところで時間を持て余すだけである。それなら少しでも長い時間を潰せる場所へ行った方がいいだろう、という判断だった。サムナが頷くと、アインは嬉しそうに笑う。
 なんとなしに街をうろついていたら、既に昼も間近だった。透き通るほどに青い空には雲がなく、目隠しされない太陽が陽光を浴びせる。それでもアクアポートのように強烈な日差しではないことがありがたかった。あまりに強い光の下では、視界の調整が間に合わない時がある。どの風景を見てもホワイトアウトすることのない視界は、それだけで安堵するものだった。

- 256 -

[*前] | [次#]

[しおりを挟む]
[表紙へ]




0.お品書きへ
9.サイトトップへ

「#オリジナル」のBL小説を読む
BL小説 BLove
- ナノ -