Piece15



「やることがやることである以上、人手が多くなるのは必須だ。それがなくちゃ成り立たない。あれは皆で作るものだ。それに彼らのような冒険者を巻き込んだのは多少の予定外だが、まあ、俺は許容の範囲内だと思うぞ」
「……暢気なんだから」
「……というか、既にとんでもないのを巻き込んでいるんだから、お前の心配は今更な気もするけどなあ」
 アインは視線を横にずらした。
「あー……うん、でもあれはどう見ても人畜無害というか。どういうわけか危機感が鈍るのよね」
「あれで神殿騎士だって言うんだから、人は見かけによらんなあ。肩書きだけで言えばあっちの方がいかついけど、見た目と雰囲気で言えばギレイオたちの方が危機感を煽るっていうのは、俺もわからないでもない」
 頬杖をついたまま、ラオコガはぼんやりと窓の外を見やる。
「お前が心配することじゃない。代わりに俺が心配しといてやるから、お前はもう少し肩の力を抜け。な?」
 カリスマ性はないとアインは思う。驚異的なリーダーシップを発揮するわけでもない、特に優れた頭脳の持ち主でもない、と本人を前にして言えば怒るどころか苦笑いを寄越すだけのお人よしだ。
 それでも人は彼に集まる。だから、アインはまず最初に、ラオコガを選んだことを思い出した。
「うん」
 ふっと、肩が軽くなったような気がした。
 店を出たギレイオたちは、仕事へ向かう人々の流れに逆らうようにして通りを歩く。多くは門を目指しており、ガイアで働く人間が多いのだろうという想像が成り立つ。残りの少数派は街の四方八方に散らばっていくため、遺跡関連の仕事に従事する連中のようだった。更に少数なのが街で店を構えている者たちで、総じて、暇そうな人間は嫌でも目立つ朝の光景である。
 大幅に狂った予定と言うべきか、それとも好転したと言うべきか、ギレイオもサムナも暇を潰すのは苦手な方だった。本来ならあくせくして情報を集めているであろう日が、ぽっかりと空いてしまったのである。どちらも何をしようと言いだすでもなく、足は自然と宿へと向かう。
「ギレイオ」
 目前に宿が迫った頃、サムナが口を開いた。
「あ?」
「少し、歩いてきてもいいだろうか」
 ギレイオは立ち止まり、サムナに向き直る。
「散歩? 偵察?」
「さあ。このまま宿に戻っても、おれには本当にすることがないだろう。だから」

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