Piece15



「その中に砂金があれば喜んで行くさ。お前はそうじゃないのか?」
 食後のお茶を一気に飲んでラオコガは問う。
「俺は沼ん中に何があるか調べてから行く派。お前のは無謀」
「アインにもよく言われる。でも、俺よりはあいつの方がよっぽど無謀だけどな」
「……まさか今回の計画を持ってきたのもあいつとか言うんじゃねえだろうなあ……」
「そういう隊商がいるっていう話を持っていたのはアインだよ。やると決めたのは俺だけど」
「二人そろってアホ……」
「アインの前で言えたら立派だけどなあ。俺に言っても始まらんぞ」
 その通りだった。ラオコガもアインも、一度決めたことを違える人種ではないことは昨日からの付き合いでも十二分に思い知ることが出来た。彼らの同胞も今のギレイオと同じように頭を悩ませたことが、一度や二度ではない回数あっただろうと思うと気の毒になってくる。こちらは一度きりの付き合いである分、まだ折れようがあったし、そうせざるを得ない理由もあった。
 ギレイオは嘆息し、頬杖をつく。
「で、そしたらあれか。俺たちは陽動でもすりゃいいのか」
「ついでに半数以上を行動不能にしてくれたらありがたい」
「簡単に言ってくれるなー……」
「魔法は使えないのか?」
「サムナは使えねえ。俺は使えるけどカスみたいなもん」
 食事を終えたラオコガは腕を組み、背もたれに寄りかかった。
「なら、魔法を使える連中をつければ何とかなりそうか?」
「なに、行動不能って部分は本気?」
「割とな。こっちはお前たちみたいに場慣れていないし、陽動だけじゃ盗みは成功してもその後が危うい」
 “異形なる者”の出現により、人同士の戦いが激減したとは言え、完全になくなることはない。規模を小さくし、表から裏へと戦いの場を移動しただけだ。無論、そこを生活の場とする者たちもいて、今回はそんな連中が堂々と刃物を振り回す場を与えられることになる。隊商という性質上、売り物を掠め取られたとなれば、容赦の二文字は一瞬で吹き飛ぶに違いない。
 盗みは成功するだろう。ギレイオはラオコガの統率力を見てそう思う。ごろつきの集まりよりも遥かに洗練された動きの取れる集団で、同じ目的のために行動出来る。武力の差はそこで大きく補填されるだろうが、成功した暁の「事後処理」は出来ない。彼らはそういった世界では生きてこなかったし、ラオコガもそれを熟知している。
 だから、危うい、という言葉を使える。
「とにかく大所帯なのが肝要なんだ。動きは鈍いが、物量ではこちらを上回る。しかもこっちは素人。どうしたって玄人を出し抜くことは出来ないし、出来たとしても必ず何かしらのツケを払わされることにはなると思うんだ。出来ればそれが金銭なら、借金よろしくどうにか出来そうなもんだが、生憎そういう連中じゃないだろう。だから、やるなら徹底的に叩くしかない」
「……そこまでわかっててどうしてやるかなー……」

- 251 -

[*前] | [次#]

[しおりを挟む]
[表紙へ]




0.お品書きへ
9.サイトトップへ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -