Piece15



「ギルドの討伐隊募集なんかでは、よく見る感じの連中だな。どうせやるならもうちょっと芸のあることをしろよって言いたい」
「芸になるかどうかはわからんが、少しだけ他とは違った部分はある」
 そこで、ラオコガは一旦、言葉を切った。もったいぶった演出にギレイオが視線をあげると、ラオコガはそれを待っていたかのように言う。
「とにかく、でかい」
 ギレイオはともかく、サムナまでもが返す言葉を見失った。それを「驚きのあまり声のでない冒険者二人」と見たのか、ラオコガは何故か得意げである。
「……で?」
「うん? だから、でかいんだ。規模が」
「いやだから、それは昨日聞いた。でかいってそれ?」
「それしかないだろう。まさかオークばりの巨漢がいるとでも思ったのか?」
 前夜、アインがラオコガを機械馬鹿と称したことが思い出される。この男には通常の会話が、他とずれた場所で展開されているようだった。何をどう言って、自分たちの場所に会話の舞台を持って来ればいいのだろうか、と苦心して思考を巡らせているギレイオに、ラオコガは更に告げた。
「総勢二百」
 渾然としたギレイオの頭に、冷たい水が注がれるようだった。
 ギレイオは顔を上げ、ラオコガを見つめる。
「うち、商人役は五人。残りの百九十五人は全て護衛兼雑用係というところだが、武器を手にして戦うことを往々にして好む連中ばかりと聞く。その中には高位魔法を使える人間もいるらしいから、人数以上の武力はあると見ていいだろうな」
 ラオコガの言葉に、ギレイオは段々と顔色を悪くしていった。そんな話は予想を遥かに越えたところにあるものである。
「……ちょっと待て、俺の想像とかなり離れた話で頭が追いつかん」
「でかいっていうのは、そういうことだ。盗品の中にはギルドや神殿騎士団に関連したものもあるらしい。今は違うが、重討伐指定候補の一つだ」
「…………まさかとは思うが、お前らが狙っている魔晶石はその関連した物ってやつじゃねえだろうな」
「ご名答」
 ラオコガはギレイオを指さして笑った。
「一介の商人や職人が扱えるような代物じゃない。本来なら神殿騎士が使うためのものを奴らが盗んで、俺たちがここで頂戴する」
 ギレイオはじっとりとした目つきでラオコガを見つめた。
「……泥沼に喜んでピクニックに行くような奴だよな、お前」

- 250 -

[*前] | [次#]

[しおりを挟む]
[表紙へ]




0.お品書きへ
9.サイトトップへ

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -