Piece14



「あんたたち二人にも、俺たち全員がかかったところで勝てなかっただろうな、さっきは」
 ギレイオは先刻の出来事を思い出した。ラオコガが現れたことで、場の空気が鎮まったのは確かだった。状況判断に外れがないことを、仲間も承知しているのだろう。
 彼の判断には間違いがないという事実を見せつけられたものの、わざわざ危ない橋を渡ろうという気が知れない。ギレイオは気持ちを切り替えるように息を吐いた。
「で? あんたの言う通りなら、今度来るのはまともな隊商じゃねえってことになるよな?」
「そうだ。それも、どれだけやらかしても看過してくれる」
 ラオコガがにやりとして言う。この自信がどのあたりに由来するものなのか、と考えた時、ギレイオにはぴんと来るものがあった。
 それまでの不満そうな顔は消え、悪巧みを共有するような笑みを口元に浮かべる。
「……俺の知ってる『まともじゃない』方法だと、そういう連中にも心当たりが出てくるなあ」
 ラオコガの横で成り行きを見守っていたアインは呆れたように溜め息をつき、同じようにギレイオの横で見守っていたサムナにも見当がつき、小さく息を吐いた。馬鹿が馬鹿馬鹿しい悪巧みを本気でしている。
 ギレイオの意見を窺うようなラオコガの表情につられ、ギレイオは言葉を続けた。
「“異形なる者”がいようがいまいが、手っ取り早く金を稼ぐには人を襲えばいい。そう考えるゴミ共が集まった盗賊団は、どこにでも大小ごちゃごちゃいるもんだ。だが、盗品は正規ルートじゃ値がつかねえ。そうすると、当然そいつらから盗品を買って売りさばくクズも出てくるわけだ」
 ギレイオは一旦、言葉を切り、探るようにラオコガを見据えた。
「てめえの言ってる隊商は、そんなクズ共の連合だな?」
 ラオコガは合格、とでも言いたげな満面の笑みを浮かべた。
「そうだ。それだけ知ってるなら、俺が大丈夫だと言った意味もわかるな」
 喜色満面でギレイオは腕組みをする。
「クズにはクズしか雇えねえ。神殿騎士団もギルドも護衛には入らない。勿論、腕の立つ野郎もいるだろうが、基本は冒険者や傭兵やら、いるとしても騎士団上がりの中途半端な連中だ」
 予想される、あるいは遭遇したことのある、そういった連中の力量はギレイオも充分知るところのものだった。修羅場には慣れているし、荒事はこんな生活をしている以上避けて通れない道である。自然と、ギレイオが称するところの「クズ」との付き合い──という名の喧嘩も多くなる。そんな場合はおおむね、ギレイオらの快勝に事は落ち着いていた。
 口元に笑みを浮かべ、ギレイオは言葉を続けた。
「いいぜ、その話乗った」
 その時、黙って聞いているだけだったサムナが忠告とばかりに口をはさむ。
「危ない橋は渡らないんじゃなかったのか。目立つことも避けたいと言っていたような気がするが」

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