Piece14



 それを見て、男が溜め息をつく。
「そんなことはしない。余所者がそんな目にあえば、こんな小さな街だ。すぐに何が起こったのかばれる」
「だろうな」
 そうなることを見越しての発言だったとでも言いたげな態度である。
「無許可による飛空艇の製造は原則禁止。もっとも、造ろうとしたところで設計図も何も手に入りにくいわけだが、その点はどうやらクリア出来たみたいだな。どこで手に入れた、こんな時代物」
「聞く必要があるのか」
「お前らここの人間か?」
 問いに対し、ギレイオは問いで返す。まるでさっきのお返しのようだと感じ、男は少しだけひるんだ。
「……だから?」
「盗んでほしいってのは、飛空艇の部品か? パッと見、外装品に不足があるようにも見えねえから、中身なんだろ。しかも盗むなんて言ってるあたり、正規ルートじゃお前らには手に入りにくい代物だ。どう見ても貧乏人勢揃いって感じだもんな」
 容赦のない物言いは次第に空気に棘を帯びさせてくる。それまで静観していた人間も、貧乏人とのたまったギレイオの言いぐさには思うところがあるようで、出入り口で立つ四人を囲む半円は少しずつだが、狭まっていた。
 男は顔に明らかな不快感を示す。
「そう言うあんたも同じ匂いがするがな」
「だから、まともじゃない方法も知ってる」
 ここへ来て、ようやく、ギレイオの言わんとするところが知れた。
「……さて、カードは出したぞ。どうする?」
「つまりはこう言いたいわけだな? こっちの要求を飲むかわりに、そっちの人探しを手伝えということか」
「そうだ。お前ら地元民なら、それくらい訳ないだろ。金をくれって言ってるわけじゃない。いい取引だと思うぜ」
「人探しが上手くいく保証はあるのか? その相手がここにいなければどうする。取引は成立しなくなるぞ」
「ここでの足取りがわかればそれでいい。元々、本人に会えるとも思ってねえしな」
 男は吟味するようにギレイオを見つめ、口を開いた。
「本当に手に入れられるんだな」
「仕事なら手は抜かねえ。どっちかって言うと、俺はこっちの畑の人間だからな」
「機械工か?」
「基本は修理屋」
 明らかに、男は安堵した様子だった。彼らが取り組んでいるものを思えば、当然のことである。全くの畑違いの人間と取引するよりも、はるかに話の通じる相手だと思ったに違いなかった。

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