Piece14
「手伝うって何を」
「あなたたち泥棒でしょう。盗んでほしいものがあるの」
多大な誤解を解く必要も感じられたが、それ以上に、アインの発言によってその場の空気が変質したこともギレイオらにとっては重大なことだった。
「どういうつもりだ」
男はギレイオのことなど無視し、アインに歩み寄った。普通の少女なら、睨み付けられれば竦みあがってしまいそうなほど険を含んだ目つきではあったが、アインはほんの少し身を引いただけで、逆に挑むような視線を投げかける。
「必要な物を、出来る人に手配してもらうだけよ」
「それなら俺たちで出来る。お前が出しゃばる場面じゃない」
「私が発起人なのは忘れてないでしょうね」
「実際を取り仕切っているのは俺だ。何を使って、何を必要とするかは現場にいる俺たちが決める」
第一、と言ってサムナとギレイオを順々に睨み付けた。
「得体の知れない余所者を巻き込んでどうするつもりだ。必要以上に話が漏れるのは良くない」
「余所者だからいいんじゃない。長くは滞在しないんでしょう?」
アインは男を見据えたまま、ギレイオに向かって問うた。
このまま傍観者でいられれば、という淡い希望を捨て、ギレイオは溜め息まじりに答える。
「用が済んだらな。そのつもりでいたらお前に連れて来られた」
「用というのは?」
男がアインから視線を外してギレイオを振り返る。
「人探し。それで家の前に突っ立ってたら、そいつに無理矢理」
「泥棒じゃなかったの?」
間髪入れず、驚いたように問うアインの声が響き渡る。ギレイオは憤然とした顔で答えた。
「最初から違うって言ってるだろうが。大体、空き家の前に立ってたら誰でも泥棒か?」
「……だってあの家」
アインの中で立ててあった計画が、段々と崩れていく。手から零れ落ちそうになる欠片を拾い集めるように言い募ろうとすると、「アイン」と言って男が鋭く制した。これにはさすがの彼女も黙った。
口をつぐんだアインを見て嘆息し、男はギレイオに向き直る。
「うちの仲間が済まないことをした。人探しというのは本当なんだな?」
「そんな、しょうもない嘘ついてどうするんだよ。で? 俺たちは帰ってもいいのか」
見たところ、と言って飛空艇を見上げる。
「どうも俺らは見ちゃいけねえもんを見たような気がしてならねえんだけどな。口封じでもするか?」
ギレイオの言葉に険が含まれ、それを敏感に感じ取った連中がわずかに身を乗り出す。ギレイオは何の構えも取ってはいないが、サムナはいつでも応じることが出来るように少しだけ姿勢を変えた。
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