Piece14



 しかし、出迎えたのはそれだけではなく、アインに続いて入ってきた見慣れぬ旅人二人に、神殿内で動いていた人間全ての視線が容赦なく突き刺さる。それで恐れおののくギレイオであればまだ可愛げもあったろうが、生憎と、そんな可愛げは持ち合わせがなかった。視線はやがて見分するような物へと変わったが、それに気づいたのはサムナのみで、全く意に介さずに飛空艇へ歩み寄ろうとしたギレイオへ鋭く制止の声がかけられた。
「止まれ」
 若い声だった。だが、声の若さに似合わず、それは場の空気を支配する。リーダー格の人間であることは間違いない。
 足を止めたギレイオは声のする方を向いた。体格のいい男である。髪を短く切り、頑固そうな面持ちではあるが、目は誠実さを表すかのように真っ直ぐと人を見る。着ている作業服はギレイオも馴染みのある汚れで一杯で、ギレイオは少しだけ警戒を解いた。自分が知っている物を身に着けている人間がいるというのは、それだけで人となりの一端がわかったような気になれる。もっとも、張り詰めた空気までは理解出来なかったが。
「あんたが頭?」
「あんたがたは何だ」
 問いに問いで返すあたり、頑固そうという印象は間違いでもないようだ。
 ギレイオは息を吐き、説明を求めるように後ろを振り返る。が、アインは場面の急展開についていけなかったようで、ぼけっとして見ているだけだった。ギレイオは呆れながら、声を荒げる。
「起きろ!」
 声が反響し、わずかに残っていた作業の音も止んだ。
 びくっとしてアインはギレイオを見つめ、それから男の方へと視線を転じる。次いで、その場にいる全ての目が自分を見つめていることに気づき、ようやく、呆けている場合ではないことに思い至った。
 ギレイオは腕組みをし、アインを見上げる。
「で、お前は俺らをここに連れてきて何をしたいわけ。案内人が呆けてるんじゃねえよ。俺ら置いてけぼりだろ」
「あなたがいきなり喧嘩を売り出すからでしょ!」
「俺だって安売りしたくねえけど、売ってほしそうな空気で迎えられちゃなあ」
「そんなの自分のせいじゃない!」
「アイン、彼らは何だ。お前が連れてきたのか」
 静かな声が更に言い募ろうとするアインを制する。アインはギレイオを睨み付けた後、男に気後れしない様子で答えた。
「そうよ。この人たちにも手伝ってもらう」
「……あ?」
「なんだって?」
 どうやらアインの真意を知らないのはギレイオたちだけではなかったようだ。ギレイオと男は一瞬、顔を見合わせ、再びアインを見据える。

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