Piece14



 サムナは逡巡した後、答えた。
「仮にここが生者の街であったなら、死者の街と仮説を立てられた生者の側はどう思うのか気にはなるが、仮説の筋立てには理解がいく」
「……は?」
 アインが茫然としてサムナを見上げる横で、ギレイオは後頭部で手を組んでのんびりと歩き出した。
「言ってることはわかるけど、結局中身はわからねえってことだよ、それは」
 悠長な口ぶりで言うギレイオに反論するでもなく、サムナは「そういうこととも言い切れないが」とだけ残してギレイオの後に続こうとする。しかし、歩き出そうとしないアインを不思議に思ったらしく、彼は少し歩いたところで振り返った。
「行かないのか? あれが目的地ではないのか」
 盛大な肩すかしを食らったような気になり、アインは大声で「そうよ!」と言うと、肩をいからせて二人を一気に追い越して行く。
──なんなの、あれは。
 見誤ったかもしれない、とアインは今更ながらに後悔し始めていた。
 だが、時間はない。人選に割ける時間はもうなかった。



 勢いよく二人を追い越したアインは先導する気があるのかないのか、わからない足取りで前を進む。のんびりと歩く二人とは距離が開く一方で、しかし、アインは一向にこちらを振り返ろうとしなかった。
 どこから見ても、小さな体から発せられるのは怒りそのもので、彼女の歩調に大きな影響を与えていることはわかる。それでも、そうなった理由に、原因は首を傾げざるを得ない。
「……なに怒ってんだ、あいつ」
「彼女を怒らせるような事を言ったのか?」
「いや、俺じゃなくてお前だろ、それなら」
「可能性は否定出来ないが、お前にもその可能性はあると思うが」
「どっちの割合が高いって?」
「さあ……どうだろう」
「両方に怒ってるのよ!」
 暢気に会話する二人をようやく振り返ったところで飛び出たのは、単なる罵声だった。特に飾り立てたところのない主張は、それでも、二人の頭に届いて理解されることはなかった。
「……なんで」

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