Piece9



「……自分の分だけでも買い出しに行くか」
 それでも、ぶつくさと悪態をつかずにはいられないのは、ギレイオの性だった。
「買い出しに行くならオレたちの分も頼んだぞ」
「便乗すんな」
「オレたちの力が必要なんだろうが。ここで恩を売っておけば、施術の時に麻酔代くらいはタダになるかもしれないぞ」
「……」
 本気で考え始めたギレイオへ、ロマは慌てて言葉を足す。
「馬鹿! 冗談だ!」
「いや、ワイズマンだぞ? あいつだぞ? 自分の失敗を俺かサムナで補填しようと考えないわけが……」
 考えるまでもなく、答えがロマの口をついて出る。
「ないだろうが、今回は少し特殊だ。彼がいる。その調査で差し引きゼロになるどころか、お前に報酬まで払わなけりゃならなくなる」
「マジ?」
「金がないって言っただろう。気持ちだ、気持ち」
「気持ちで腹は膨れません」
「なら、おごってくれてもオレはいっこうに構わない」
「貧乏人にたかるんじゃねえ」
「同じ言葉を返してやる。……ところで」
 ロマは手を止めて振り返った。
「お前は居候する身でありながら、家事を手伝おうとかそういう気にはならないのか!?」
 頬杖をついて暢気に構えていたギレイオは至極当然といった顔で、頭上に疑問符を点滅させる。
「なんで?」
「……いや、いい、なれとは言わん。言わんから、なってる風な振る舞いを見せるとかいう気遣いぐらいは見せろ」
「普通の言葉で言えよ……」
「この惨状を見て良心が痛まないか、お前!?」
 口では何とでも言いながら、ロマの手は再び動き出して、食器についた洗剤の泡を洗い落としている。その手際の良さと文句の内容がちぐはぐで、ギレイオは何とも言えない表情を作り出した。
「お前、結構、家事好きじゃねえか……」
「嫌いじゃないが押し付けられるのは嫌いだ! ましてや、目の前に怠け者がいる時は特にな!」

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