Piece9



「……そう、眼底で生体と魔石の橋渡しをする」
「しかし、それでも魔石はただの石だ」
「そこで魔法の登場だ。言っただろう? ギレイオの義眼は本来、目の代わりをさせるために入れたものじゃない。……だから、ゴラティアスはここに来たんだ」
「……魔法を封じるには魔法ということか」
「触媒としての魔法ということだ。先生は水力属性方程式魔法、オレは無属性方程式魔法」
 サムナは目を瞠る。
「お前も?」
「ギレイオほどの逸品じゃないけどな。まあでも、珍品ではあるか。オレのは魔法の軟化。……よくわからないって顔だな。じゃあ、通常放たれる魔法を硬い粘土だとして、それは他者の影響を受けにくい非常に硬度の高い物だ。オレはそれを軟らかく練り直して、任意の力として発現することが出来る。これで理解出来るか?」
 サムナは頷いた。
「だからといって、魔法の威力が増すわけでもない。結局は、その魔法を放った本人の資質が物を言うんだが、先生の魔法は割と強くて、しかもその使い方がアイデアに富んでいる。人間の体のほとんどが水で出来ているっていうのは知っているだろう? 先生は魔法で人の体内の水に働きかけて、医学的効果を発現することを主としていた」
「医学的効果?」
「自己治癒能力とか、人間が本来持ちうる力の上昇とか、そういったところだな。ドーピング火事場の馬鹿力と言った奴もいたが」
 その言い回しに思い当たるところがあり、サムナは微かに苦笑を浮かべる。
「ギレイオだな」
 ロマは笑って肯定した。
「そうだ。さすがにわかるか。先生は不遜だと言っていたが、オレは的を射た言い回しだと思ったよ。……まあ、そういう使い方を知っていた先生とオレの魔法が合わされば、魔石はただの石ではなくなる。先生の魔法で魔石と機械に生体的な要素を持たせ、オレの魔法でそれを強固な魔法の檻に練り上げる。機械が魔石と生体の橋渡しをすれば、晴れて魔石は義眼となる」
 だが、と言ってロマは苦笑まじりに息を吐いた。
「橋渡しの機械は、機械だ。生体との融合は果たせていないし、ただの変換機のようにして居座っているにすぎない。それでも、オレたちには画期的だったけどね。視力の回復はほとんど副産物みたいなもんだ」
「……しかし、ワイズマンの魔法がそうであるなら、機械はいらないんじゃないのか? 直接魔法で働きかければいい」
 サムナの問いかけに、ロマは少しだけ表情を硬くした。
「ギレイオの魔法はあらゆるものを分解する。今は有機物に留まっているが、いずれはその制限も突破するだろう」

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