Piece9



 後ろに手を投げ出し、ギレイオはそこに体重を預けて空を仰ぐ。
「俺の魔法が今どれくらいまで育ってるか、あんたならわかるのか」
「さて。今日会ったばかりなのでなんとも」
 ワイズマンは頬杖をついて、ギレイオの背中を見つめる。
「どれくらいまで育っているのか、見てほしくてそんなことをしていたというのなら、不毛なことです」
 少し首を伸ばすと、家の壁に沿って山と積まれた薪が見える。ワイズマンが記憶しているよりもいくらか、その数を少なくしていた。
 ワイズマンは溜め息をつく。
「困りますね。薪は我々にとって貴重な燃料ですよ」
「自家発電してるくせして、被害者ぶるな」
「それはそれ、これはこれです。消した本人が威張って言うことですか」
「威張るかよ。物は試しでやったら、まああっさりと消えたもんで俺も驚いてんの、今」
 淡々とした口調に動揺はない。どこか、諦観にも似た響きがそこには滲む。
 来るものが来た。ただそれだけがギレイオの中でずっと木霊していた。
「ちょっと前に“異形なる者”とやりあってさ」
「アクアポートのあれですか」
「話早ぇなあ」
 ギレイオはちらりと振り返った。
「まあブチ切れた俺も悪いっちゃ悪いんだけどな。でもまあ、触れるもの掴むもの、辺り構わず消えてくもんだから、さすがに血の気が引いたね、あれは。久しぶりに使ったから限度がわからなくなってたのかどうなのか、わからねえけど」
「使わないからといって減退するものでもありませんからね、君の場合は」
「何したって変わらないってことか?」
「僕らの施した封が破れれば、そうなりますが。まあ封をしているところで、きっと君の魔法はそれを侵食していくでしょうし、強烈に押さえ込んでいる分、いざ封が外れればその反動で進行が速くなる可能性もないとは言えません。しないよりはマシ程度の保険と思ってくださいというのは、前にも話しましたよね」
「……覚えてねえや」
「ではいい機会ですから、覚えなさい」
「無茶言うなあ」
 ギレイオは切り株から腰をあげる。そして体を伸ばす背中に向かって、ワイズマンは声をかけた。
「君の現状と僕の予想から出した私見ですが、少なくとも、君がここに来た時よりは威力は増していると思いますよ」
「どれくらい?」
 ワイズマンは軽く嘆息する。

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