Piece9



 どうすればワイズマンの警戒を解けるか、とギレイオが一考を重ねていると、それまでワイズマンの横で黙っていたロマが口を開いた。
「よろしいですか、先生」
 何を考えているのか読めない表情でギレイオを見つめていたワイズマンが、ちらりと顔をあげる。
「なんですか?」
「ギレイオの言う事の真偽はともかく、依頼の内容は通常では遭遇出来ないものです」
「リスクと天秤にかける価値があるとでも? そのリスクは誰が負うと思っているんですか」
「もちろん、先生でしょう。ですがリスクのない探求はあり得ないからこそ、先生はここにいらっしゃるのではないのですか」
 ワイズマンは口元ににやりと笑みを浮かべた。
「よく覚えていましたね。そこで君は一体、僕に何を提案するつもりなんです?」
「サムナさんの徹底的な調査を提案します」
 静観していたギレイオが、がたん、と音をたてて椅子から身を乗り出した。
「おい、待て。当事者の俺抜きに話をするな。それは駄目だ」
「もう少し話を聞け。オレも先生も現状を壊すような真似をしたくはない」
 これにはワイズマンも口を出すことはしなかった。
 ロマはギレイオとワイズマンを交互に見ながら話を進める。
「彼がどこまで機械化されているかわからないが、先生やオレが知りたいのは彼の頭の中じゃない。お前がそうまで警戒するってことは、きっとそこに肝があるからなんだろう?」
 諭すような口調に、ギレイオは浮かした腰を椅子に戻した。
「知りたいのは生体と機械の融合の方法だ。お前の言葉を丸のみするなら、彼は驚異的な技術の結晶としか言えない。生体と機械が融合しても、その動きはどうしたって不自然になるからな。だが、彼にはそうした不自然さがない」
 おそらくは、と肘掛の上で頬杖をついたワイズマンがようやく口を開く。
「何かしらの魔法が関わっているのでしょう。魔晶石を動力にしているということが、本当であればの話ですが。それでも、その魔法は通常ではあり得ないことをなし得た魔法ということになります。……無論、機械工学、システムなどの可能性も考えられますが、まあ可能性としては低いでしょうね。結局は『機械』を動かす目的で構築されるものですから。……彼の動きは人間そのものです」
 ワイズマンのもらした息が、感嘆の息であることをギレイオは感じた。
 しばらく、ギレイオはワイズマンとロマを睨み付けていたが、やがて腕組みをして椅子に深く座る。
「……サムナは腹と左腕を損傷している。その修理を頼みたい。ついでに、メンテナンスも兼ねて損傷部周辺を調べるだけなら問題ない。そして、それには俺も立ち会う。これは俺からの条件だ」
「動力部と頭もそこに含めてください」
 ロマの話などまるで聞いていなかったかのように、しれっと追加を求める。だが、ギレイオは硬い表情を崩さずに頭を振った。

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