Piece8



 もっとも、と言ってロマは森の中へ歩き始めた。
「使われた魔法の威力によっては人物も特定出来る。だから、こそこそ何かをしたければ、原始的な方法に頼るしかない」
「なら、あれは学校から逃げるための出入り口ということか?」
 ロマはサムナの口調に苦笑いした。
「どの時代にも、そういう生徒はいるってことだよ。正門から堂々と出入り出来ないことをしたい先輩方の努力の結晶だ。それを後輩たちが、延々と守っている」
「ここの教師には学校の卒業生が何人かいるからな。一緒になって見つからないようにしてるってのも、ここまで残った理由だよ。納得したか?」
 サムナに聞かれる前にギレイオが疑問を先取りして答える。全くその通りの疑問を抱えていたので、サムナは頷いて返した。
 ロマは森を慣れた足取りで歩いていく。裏口から一瞬の迷いも見せず、淡々と二人を連れて歩くが、不思議と人の気配はしなかった。だからこそ裏口製作の場所に抜擢されたのだろうが、学校である、という意識を取り除けば、ただの森を歩いているのと大差ない。それだけに森は深く、木立ちの間を透かし見ようとしても、建物らしきものは見えなかった。
「深い森だろう」
 辺りを見回して歩くサムナに気づいたのか、ロマが歩きながら振り返る。
 これにはギレイオが口を開いた。
「前より広がってねえか?」
「お前がいた頃よりは広がってるだろうな。先生の道楽さ」
「道楽で植林かよ……」
「それほど慈善的でもないけどな……単に学校側に見つかりそうになったから、迷路のつもりで色々やったら、こうなった」
「お前もやったの?」
「オレに拒否出来る権利なんかあるもんか……」
「……」
「おかげで一般の生徒も迷う事態になるし、そうすると迷子の面倒も見ないといけないし……お前がいた時以上に仕事は増えてややこしくなってるんだよ」
 ロマは深い溜め息をついた後、足を止めて二人を振り返った。
「先生には取り次ぐが、事の説明と依頼は自分たちでやれよ」
 ギレイオがにやにやしながら言う。
「お前が逃げようとしてたってこと、口止めしなくていいのかよ」
 ロマは青い顔でひときわ深い溜め息をついた。
「どうせ、とっくにばれてる。自首した方が罪は軽いだろ」

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