Piece8



「……地道に探して行くのか?」
 ギレイオは素早く返す。
「仕方ねえだろ。どこをどういうタイミングで点検してるかなんて、俺でもわかんねえよ」
「だが、一番最初は違っただろう。やっぱり、とお前は言ったと思うんだが」
「人間、手抜きはしたいだろ。取っ掛かりが見えたとしても、中身さえしっかりしてりゃいいってこと」
 まあ、と言ってギレイオは再び視線を巡らせる。
「その取っ掛かりから、ちまちま道を見つける暇人もいるけどな」
「取っ掛かりというのが、さっきのあれだな」
「点検されてないから自然と精度も落ちる。あの調子じゃ侵入者の存在も感知出来ないんじゃねえかな」
「……警報装置が聞いて呆れるな。その程度の物で守ろうというのが」
「警報っつったって威嚇程度の代物だからさ。学校ん中入ろうもんなら、術者の卵からプロからぼっこぼこにされて終わり。そうなりたくなきゃ立ち去れって老婆心みたいなもんだよ」
 老婆心、というにはいささか歪すぎる親切心のような気もするが、サムナはそれ以上言及するのはやめた。ギレイオはサムナが会話を切るのを認めると、すぐさま次の道筋を見つける作業に戻る。これはどうしたってサムナには出来ない。だから邪魔になるようなこともしないようにしよう、と考えた。
 中腹を過ぎた当たりから、探索にかかる時間が増えていく。ギレイオが言うところの点検作業が密に行われている地帯だからだろうか、見つけることが容易ではなくなってきたようだった。
 警報装置というからどれだけ大層なものが備わっているのか、とサムナは思っていたが、実際、彼の足もとにあるのは小さな石が一つ埋まっているのみである。晴天の空の色を凝縮したかのような色合いは魔石のもので、ギレイオに聞けば、確かにそれは魔石だと答えた。
「それを媒体にして無属性方程式魔法を始終、発動させてる」
「人がそれを?」
 どうだろうなあ、とギレイオは曖昧に返した。
「二十四時間、年中無休で人がもつかってのは疑問だな。実際、魔法は機能してるし、それを行っている奴がいるのは間違いないけどさ」
 ギレイオはサムナの足もとで鈍い光を放つ魔石を振り返った。
「人間によるメンテも時々入れつつ、ほぼ恒久的に魔法が発動するような、なんか仕掛けでも仕込んでるってところだろ。そこまでくると、魔法っつうより機械的な意味合いの方が強い感じもするけどな」
「機械的か……」
 自分と同じようなものか、と思いながらサムナが魔石を見つめていると、ギレイオが内心を読んだかのように言った。
「今、自分と同じとか思ったろ」
「同じだろう」
「お前みたいな奇想天外な奴と、そんな装置を一緒にするなっての。大体、次元が違うんだよ」
 ギレイオはサムナを指さした。
「そこんとこ、もうちょい理解を深めとけ。自分のことがわからねえまんまってのが一番厄介だ」
 そう言った後、一瞬だけ苦い顔をしたが、ギレイオはすぐに表情を戻し、探索に戻った。きっと自分のことも一緒に振り返ったのだろう、とサムナは思った。

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