Piece7
「じじいを見習うようじゃ、人生終いだよ」
「お前の父親も似たようなことを言うとったな。腕だけ磨かせてもらうとか、ぬけぬけとほざきおった」
ギレイオは少しだけ目を見張った。
「……父さんが?」
ゴルは頷く。
「ここへ来て、しばらく経ってからな。宣言通り、これまでの弟子の中で一番、わしに似んかった」
「そりゃ結構だ」
かちゃかちゃと、機械をいじる音がやたらと響く。
ゴルは数秒置いてから続けた。
「……お前もそうじゃな。わしに似ず、わしよりあくどい」
「褒めてくれてどうも」
「なんじゃ、悪態の一つでもつかんか」
「仕事に集中してるもんで」
「話に参加したくないだけじゃろうが」
大きな溜め息と共に放たれた言葉に、ギレイオは明らかな反応を見せた。反響していた機械いじりの音がぴたりと止む。
ゴルは頬杖をつく。
「わしはもう、時効じゃと思うがね。お前はそれを引きずって、自己満足に浸っているに過ぎん。それは家族の墓参りに行かん理由になるか?」
「なるさ」
ギレイオは乱暴に工具を投げ捨てた。荒々しい金属音はそのまま、ギレイオの内情を物語る。
余韻を残して消えていこうとする音へ被さるようにして、ギレイオは続けた。その声は小さく、低く、血を絞り出すような苦しさに満ちている。
「全部殺しちまったんだ。関係ない連中も全部。あいつらの骨すら拾えないのに、俺だけがとっとと弔って、片づけて、終わりにするなんて虫がよすぎるだろ」
「……母親や婆さんの骨だって同じことじゃろうが」
ギレイオは右手をきつく握りしめた。
あの時かき集めた、骨なのか砂なのかわからない、やたらさらさらとした細かな粒子の粒が、まだ手のどこかに残っているような気がして気分が悪い。
記憶の中で、黄色い花が揺れる。
あの下にはギレイオが壊してしまったものが眠っている。
「……やなこと思い出させるなよな」
「嫌なことはいつまでも放置しておくと、更に大きな毒を吐くようになるぞ。わしはお前がそれほど強いとは思わんから、こうして言っとるんじゃ」
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