Piece7



「だから、ギレイオさんの主目的を聞いたんです。戦闘能力の減退はあくまでその結果であって、目的ではなかったんです。それなら、戦闘能力を復帰させる前に、本当は何で封じられたのかってところをまず解決すべきじゃないですか?」
 ギレイオは数秒、黙した後に、小さく息を吐いた。
「……ガキの頃のツケを、これ以上ほっとくのも厄介だしなあ」
 あくまで嫌そうな、しかしいつも通りの調子にヤンケはほっとした。
 ギレイオに提言した時、ギレイオはこれを聞き入れないのではないか、とヤンケは考えていた。頑固な性格で人の言うことの半分は聞かないのが、この兄弟子だが、どうやらサムナの件に関しては、他者の介入に拒絶と言ってもいい反応を示す。それはゴルを相手にした時に、まざまざと見せつけられた。
 依存、という言葉が浮かび、その理由もおおよその見当がつく。そしてどうも、ギレイオ本人もそのことをわかっているらしいとヤンケが気づいたのはごく最近のことだが、それはギレイオ自身にも同じことが言えるようだった。拒むだけでなくなった兄弟子は、前よりも話しやすくなっていた。
「どこから調べますか? 例の機構の人をあたるんですよね」
 心なしか、ヤンケは声が弾んでいた。それには気づかず、ギレイオは答える。
「無理だよ。そいつはもう死んでる」
「……死んでる?」
「聞いただけだけどな。病気だか事故だか、原因ははっきりしちゃいねえけど。だから、まずはそいつが本当に死んでるかどうかを調べてからだ。生きてるなら所在を、死んでるなら死ぬ間際までの行動を追う」
 ヤンケはマッドを装着した。
「少し時間かかりますよ」
「じゃあ昼寝でもして待ってるよ」
 操作卓から離れようとするギレイオに、ヤンケは続けて声をかけた。
「サムナさんは起こしますか?」
 ギレイオは大して迷いもせず、「寝かしとけ」と言ってその場を去った。



 暗闇にのんびりとしたランタンの光が灯る。薄黄色を帯びた光は遠くへ行くにつれてその明るさを弱くしていくが、不思議と心細さを感じることのない光だった。むしろ、どれだけ離れても、その微かな光が届くことに心強さを覚える、温もりのある光が、ギレイオは好きだった。
 その光の中心点の下で、工具を片手にギレイオは車に向かう。ここへ共に乗り込んできた愛車だが、悪路続きに乱暴な運転、加えて、地下に至る道での数々の罠を前に、先日、とうとう音をあげてしまった。「要塞」を拠点として過ごす日々に、足として車は必要なく、久しぶりにエンジンでもかけてやろうと思った末の出来事である。

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