Piece7



 これまでの調査でわかったことと言えば、時間をかければサムナは強くなれるということだった。つまり、人間とほとんど変わらないということである。
 エインスたちがそれを待ってくれるとは思えない。
 ギレイオは鼻から息を吐いた。
「封じられた箇所は開けられそうか?」
「無理です」
 操作卓をいじるまでもなく、ヤンケは即答した。
 この変人から、自らの力不足を認めるような言葉が即座に返ってくるとは思わず、ギレイオは数瞬、黙した後にもう一度聞く。
「……出来ねえの?」
「だから出来ませんって」
 うるさそうにヤンケは繰り返し、指を走らせてモニターの画面を変えた。
「時間はかかりますけど、鍵を突破することは出来ます。でも、ほら。その鍵と自爆プログラムがリンクしてるんです。まずこのリンクを解かないと、サムナさんは死んでしまいます」
「そっちも出来ねえの?」
「出来ません。どちらも無理に開けようとしたり、解除コードを探るようなことをすれば自爆します」
「他人は全く触れないってことか。ったく、無断でややこしいことしやがって……にしても自爆なあ」
 後半の方になり、ギレイオは苦笑をもらしながら呟いた。
 ヤンケはギレイオを見上げる。
「出来るものなんですか?」
「わかんねえのかよ、爆弾女」
「爆弾は専門外です」
「性格のこと言ってんだよ、馬鹿」
 まあ、と言ってギレイオは組んだ腕をほどいた。
「拳くらいの魔晶石一個抱えてるんだ。どういう原理で動かしてんだか知らねえが、動力炉暴走させて爆発ってのがセオリーだな」
「なんですか、そのお約束……」
「あまりにお約束すぎてアホらしい。他にお頭の使い様がないのかね」
 ヤンケはそんなギレイオを横目に見ながら、おそるおそるといった体で操作卓に指を走らせた。
「……その使い様だったのか知りませんけど。妙なのがあるにはあるんですよね」
 言うのを躊躇うような素振りに、ギレイオはおや、と思う。
「なに、お前にもわからねえの」
 その物言いにヤンケはあからさまに雰囲気を悪くした。わからないことばかりが自分の前に陳列され、その全てに手も足も出ないという状況が、ヤンケにはとても悔しいことなのだろう。だから、ギレイオに指摘されたことが腹立たしく思える反面、わからない、という事実は覆らないために、返す言葉が見つからない。

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