057.コンビニ(5)


 そうだ、何となくここに来て、何となく葉巻を吸っていただけだった。

 必要はない、とはいつもなら大きく頷く部分である。だが、今回に限って少女の口からそれが出てくるのが、どうしてか気に入らなかった。

 強くガルベリオを否定しながらも腕を離さないことがガルベリオを更にイラつかせ、思わず声を荒げようとした時、コンビニの扉が開いて、中から箒を持った祖父と客の何人かがそろそろと出てきた。どうやらガルベリオが少女を傷つけようとしているように見えたらしく、皆、一様に警戒と恐れを抱きながらこちらを見ている。

──慣れた視線だな。

 呆れるでもなく、そう思った。そういう目で見られたからといって、傷つくような心を持っていては生きていられない。

 引き時か、と少女の手を離そうとすると、彼女は更に強く掴んだ。

「きみのおじいさんと喧嘩する趣味はねえって」

「わかってます。そうじゃなくて」

 少女の声は震えている。

「今になって、怖くなってきて……あんなの見たの、初めてだったから」

「あー……」

 彼女の年頃には確かにショックが過ぎる出来事だったろう。配慮が足りなかった。

「……そりゃ、悪かったな」

「うん」

「……」

 素直すぎる反応に言葉を失うガルベリオの前で、祖父が少女に向かって声をあげる。大丈夫か、という問いに少女は涙を拭って振り返った。

「大丈夫、ごめん」

「それで、その人は」

 決死の覚悟を滲ませて問う。客たちの臨戦態勢も最高潮に達した。やはりよからぬ誤解を抱かれているらしい、と思うと、この視線もまた別の意味を帯びてくる。

 彼らは警戒しているのではなく、少女を心配しているのだ。

 ということは、この誤解さえ解けば晴れてお役御免ということだが、と頭の巡りを良くしていると、少女はガルベリオを祖父を見比べながら誰でもわかるような嘘をついた。

「と、友達」

 空気が止まる。自販機のモーター音がやけに大きく聞こえ、祖父や客共々、ガルベリオまで呆気に取られた。

「が、学校のかね?」

 あまりに驚いたためか、祖父が筋違いな質問をする。それは違うだろう、と心の中でつっこむが、少女はとにかく「友達」説を通したいようだった。

「学校の友達の友達」

「…………まあ、うん……そうか」

 納得しないでほしいと思っても、彼らはそれでどうにか決着をつけて、日常に戻りたいらしい。祖父は構えていた箒を下ろし、一緒に出てくれた客に礼を言いながら、少女の方を向く。

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