スカイ
──空を歩く。
鉄棒から逆さにぶら下がっていると、空を歩いているような感覚になる。
いつも足下に広がる大地は頭上に腕を広げ、頭上に広がっていた空が足下に裾を広げる。
大地とは違う、果てが見えない空を歩くという感覚は、いつもは手に届かない物を掌握しているような気分になった。
それが夕焼け空であれば尚更である。
──夕暮れ時は1日の終わり。
皆が足下を見ながら帰る中、私は美しく燃え上がる空を掴んで自分のものに出来るのだ。
この瞬間だけ、1日の終わりは私のものになる。
「……よし!」
勢いをつけて、いつもの世界に舞い戻った。
沈んでいた心も上昇気流に乗ることが出来ている。
準備はオッケー、気分は上々。
帰路に着いた私の心も、今ははるか上を歩いている。
終
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