番外編 ちいさな明かり
番外編 ちいさな明かり
「……これ三つでその値段?もうちょいまかんない?」
「だめだめ、甘い顔したってそうはいかないよ」
「この前はまけてくれたじゃんか」
「この前はこの前、今は今。それにね、今度、領主んところに国軍が来るっていうもんだから、しばらくは稼ぎに困らないんだよ。まけてまで売る必要はないね」
国軍、という言葉に、値引き交渉をするバーンの後ろで品物を見ていたライが顔を上げた。一瞬だけ視線を交わし、バーンは手に持った果物へ目をやりながら問うた。
「国軍がまた何でこんな辺境に」
「うちの街に文句つけようってのかい」
違うって、と苦笑する。
「こないだのあれでグラミリオンの国軍だって忙しいだろ?やっと事が治まってまだ数ヵ月じゃんか。そりゃあ、まだ復興途中のエルダンテやリファムにつけこむなら、好機って言えば好機だけど」
「人聞きの悪いことを言うね」
「ごめんごめん。じゃあなんだい、詳しいこと知ってるの?」
人懐っこい笑みで下手に出たバーンへ、女店主は得意そうに話し出す。
「それがね、ほら、こないだの戦争のもとになった『時の神子』ってのがいただろ?」
「ああ、あれか。死んだんじゃなかったの?」
「ところが生きてたって話さ」
へえ、と大仰に驚いてみせ、ライにも話を聞くように横目で見る。素直にバーンの隣へ移動したライを見て、観客が二人に増えた女店主は意気揚々と続けた。
「リファムの北で見たって噂が立ってね、それを聞いたうちの王様も腰を上げたんだよ。もし『神子』がグラミリオンにいたら、保護するのが努めってね」
「それこそ、リファムと戦うために利用する目的じゃねえの?あまり穏やかな目的じゃなさそうだ」
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