第二十二章 砲声



第二十二章 砲声


 朝から城は静かな喧騒に包まれていた。一室に会したオッド、イーク、アス、バーン、イルガリム、そしてライやハルアは皆一様に暗い表情を隠せない。

 唯一、イークは軽口を叩く余裕もあったが、それすらもこの場においては空回りに終わった。

 アスが机上に広げられた大陸地図を凝視していると、開け放たれたままの扉からディスタが息を切らして駆け込む。

「アスの言う通りだ。リファムがエルダンテに進軍してる。エルダンテも迎え撃つみたいだし、グラミリオンも動き出した」

 早朝、アスとオッドから事情を聞いたバーンにたたき起こされたディスタは、馬を駆って近くの街まで情報を集めに出向いていた。

 生憎の曇り空の下ようよう明るくなってきた今、戻ってきたディスタの報告は「やはり」という思いと「まさか」という驚愕を呼び起こした。

 表情の明るくならない皆をおどおどと見回すディスタに笑ってみせ、バーンは彼を下がらせる。そして名残惜しそうな視線を背中で切り離し、輪に戻った。

「あいつの目や耳はオレ仕込みだ。間違いない」

「疑う気などないよ。間違いであってほしいとは思ったがね。……しかし、お前の打った楔は機能しなかったようだの」

 オッドは渋面を作り出すイークを見る。イークは皆の視線を受けて、苦々しく笑った。

「言葉がないな。王の承諾もなしに軍を動かすとは正直、考えもしなかった」

 それ以上語ろうとしないイークへの言及はなく、彼らは次にどうするかを考えるべく、地図へと意識を向けた。

「どうしてリファムがエルダンテに進軍するんだよ?」

 ライの問いに、椅子に腰掛けたハルアが答える。

「元々、水面下で睨みあいをきかせていたような間柄だ。それにエルダンテへ侵入したリファムの兵士もいるし、グラミリオンとの国境近くでも不審な火事があっただろう。だが……」

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