番外編 王城狂想曲



「本題に戻りますが、ラバルド様の弱みと仰られても、わたくしにはわかりかねます。何しろ陛下のお傍に仕える為に、必死になってご自身の弱点を克服なさろうとしてらっしゃるようですから」
「そうか?」
「残り少ない弱点をからかわれる陛下には、決しておわかりにならないと思います」
「まだまだ隙だらけの男だが、面白みがなくなるようでは困るな。……だが、おそらく私が知るところの弱みではない。それなら三爺が脅迫のネタには使ってはこないだろう」
「ラバルド様にとっては何を今さら、という感じがございますでしょうね」
 それは随分と可哀想な話なのでは、とシャイムは思ったが、口にはしなかった。どうやら王城勤めはこうして鍛えられていくらしい。
「私が知らない、ラバルドが知られまいとする弱みか……」
「……好きな人とかでしょうか」
 シャイムの発言に、イークとエンヌははっとしたような顔になった。
「それだ!」
 思わずシャイムを指差して声を上げたが、しばらくしてラバルドの置かれた状況に思い至り、エンヌ共々、イークは黙して口許に手を当てた。
「……だとすれば、それはまたえげつない話だな……」
「わたくしもまさかそこまでとは、ちょっと……さすがにラバルド様が不憫に思えてまいりました……」
 イークは眉間に皺を寄せ、エンヌを見た。
「わかるか? 噂話程度でも耳にしたことは」
「噂というか……ラバルド様はお暇な時、よく炊事場にいらしては菓子を作って、侍女たちが頂戴しているようですが、その時にもそんな話は聞いたことがありません」
「うー…ん? でもエンヌ様、皆、不公平だって言ってましたよ」
「何がです?」
「笑って言うし、おれがいるからだと思うんですけど。シャルだけいつも良いのがあって、多いって」
「シャル?」
「侍女にございます。庭の手入ればかりを好むので、もっぱら庭師に付かせておりますが」
 名前を聞いたところでぴんとは来ないが、庭師に、と聞いて思い出す姿がある。偏屈な庭師の傍で働く黒髪の少女がいたが、あれがそうなのだろうか。そう思って聞き返すと、エンヌは頷く。
「左様でごさいます」
 得心のいった顔でイークは相槌を打って返した。ようやく事の真相が形になってきたようだが、先刻のシャイムの言葉にひっかかるものを覚えて問い質す。
「シャイム、お前がいるから、というのはどういうことだ」

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