番外編 風来る



「そのための気分転換か。エルダンテならば、確かにあいつらの方に土地勘があるから、いくらかは安全と言っても良さそうだ」
「ま、あとは自覚を持った行動をして頂くだけですよ」
「……新王のことは私も気になる。行けるようだったら行こう」
「それで? あとはどこまで調べるよ」
 袋を懐にしまいつつ、バーンが問うと、イークは口許に手を当てて考える素振りをしてから、バーンを見据えた。
「ネドファリアの進軍の時期を知りたい」
 バーンは顔をしかめる。
「そりゃまた危ねえ橋だな」
「大まかなものでいい。だが、あの国のことだ。おそらく冬ではあるまい」
「冬じゃねえっつったら、いよいよじゃねえか。忙しいなあ。あとは?」
「艦隊の規模まで調べられたら上出来だが、そこまでは高望みしないでおこう」
「……お気遣いどーも」
「あとは、グラミリオンと多民族国家がどう応えるかを知りたい。今のところ一番元気なのは、この二国だ。リファムとて太刀打ち出来ぬほど乱れたわけではないにしろ、この二国がネドファリアと手を組めば、真っ向からやりあうのは今は避けたい」
 バーンは中空を見つめて考える。
「……グラミリオンにしちゃ、ネドファリアの艦隊の力はおいしいもんな。おまけにネドファリアは魔力の国だ。法力と真正面からやりあってどうなるか、推し量るのは難しい。ここで根性見せて、ネドファリアも撥ね退けてくれたらありがたいけどな。人の喧嘩に手え出すなって」
「犬の縄張り争いではないが、まあそれだけの根性があれば言うことはない」
「わかった。エルダンテはどうする?」
「新王と公王の繋がりは私の方で探る。群島諸国がどう出るかはわからんが、ネドファリアに加担することはないと見ていいだろう。大陸を侵略せずとも、あの国には資源がある。だが、混乱に乗じて国境を変えようなどすれば、こちらも黙ってはいない。それだけの野心があるかどうか、それを知ることが出来ればいいが、これは王城でないと知ることが出来ん話だ」
「じゃ、オレの出る幕じゃねえな。了解」
 バーンは立ち上がり、紙束をまとめていた皮袋を腰に戻して窓の外を眺める。
「にしてもすげえ天気だな。雨降ると思う?」
「さあな。いつもなら一雨来るだろうが。馬車でも欲しいのか」
「出すつもりもねえのに言うなよ」
「お前を賓客扱いすれば、他の家臣が不審に思う。特別待遇はこれからもないと思ってもらえれば光栄だ」

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