第二十八章 帰還



「王城でのアスラードの位置はわかるか?」

「多分」

「多分では駄目だ。はっきりとわかるようでなければ」

 強い物言いに多少むっとしつつ、ライは「わかる」と言い切った。

「アスがいる場所ぐらい」

「上等だ。王城へ侵入した後はライノットを先頭にして、一直線にアスラードを目指す。戦力を分散させて探す暇はない。見誤るなよ」

 ばん、と力強くライの背中を叩く。予想外に強い力で叩かれよろめくライを、笑い声が包んだ。


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 東の空に白々と朝を迎えようかという時刻、夜闇に紛れてリファム軍はエルダンテ王城へ突入を開始した。息をひそめて家の中から見守る民や兵士には目もくれず、風のような勢いで大通りを突き進む彼らに迷いはなく、蹄が大地を蹴る音ばかりが空へと弾ける。

 鎧や剣が跳ねる金属音が遠ざかると、恐る恐る顔を出した民の頬を冬の冷たさを伴った空気が叩いた。冬には早いはずだが、とあまりに冷たいそれに驚く彼らの前をリファムの第二陣が駆け抜けた時、不意に足元が大きく揺れた。

「うわ……!」

 妙に緊張した街をたたき起こすかのような揺れは大きく、家具や食器の類が床へ飛び出す。あまりに大きな揺れの前に机の下に逃げ込むという考えはどこかへ行き、人々は慌てて外へ飛び出し、その寒さと空に広がる光景を目の当たりにして目を丸くした。

 同じく外へ飛び出した隣近所の者も揃って空を見上げ、口々に疑問を呟く。

 なんだあれは、と。

 王城正門が見えたところで馬を乗り捨て、近くの路地に潜んでいたライたちも人々の異様な様子に一瞬、足を止める。本当なら止まっている暇はない。しかし、まばらだった人々の影が次第に増え、そのどれもが空を見上げて疑問を口にする姿を見ればさすがに見過ごすことは出来ない。

 少し広い路地へと出て、空を見上げる。頬を打つ冷たさも忘れてライはその光景に見入った。

「何だあれは……」

 図らずも民と同じ言葉を口にする羽目になったライの目の前には、これまで見たこともないような光景が広がっていた。

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