第二十一章 影の在り処
自嘲気味に笑ってみせて肩をすくめる。
ゆっくりと驚愕がこみあげてきたらしい周囲に反し、ハルアが冷静に言い放った。
「なら、ハヴァニウム様は全て承知の上で行動されたというわけか?」
「だろうな」
組んでいた手を解き、イークは膝の上で頬杖をつく。
「性格の悪さではオッドにひけを取らない。何か望む所があってアスラードを狙っているんだろう。ヘイルソンも同じだが、奴らは人間と手を組むような真似はしない」
「……リミオスは何らかの意図あって『時の神子』を追っておる。欠片が集まっている以上、『時の器』がそれに関係しているのは否定出来ず、目的の為に国をも動かしておるようだ。その為に人心を傷つけ、血を流すことを止むなしとも考えておるやもしれぬ」
言いながら沈鬱な表情になるオッドを見て顔をしかめ、嘆息しつつイークは言葉を続けた。
「わたしがリファムを離れたのはそれがあるからだ。国にいては足元が見えぬまま、すくわれる可能性がある。『時の神子』という存在が表になったのなら賢者であるこいつも表に引きずり出し、事を表層へ持ち出す必要があった」
「それは……ハヴァニウムの策を知るためにか」
段々と事態を飲み込めてきたバーンの言に頷く。
「いちいち隠し事が得意な男だからな。ならば表に出してしまえば少しは足並みも崩れるかと思ったものだが、策士にはかなわん。一つを潰せば倍の策で構えてくる」
「……なあ、あんたの話を聞いてると」
バーンが顔をしかめる。
「どうもハヴァニウムと知り合いみたいな感じがするんだが、どうだ?」
ライが敏感に反応する。その向こうでちらりとオッドが顔を上げた。
イークは瞳へ僅かに暗い光を灯し、「ああ」と頷いた。
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