第二十一章 影の在り処
銀の瞳が強い光を帯びる。
「世界を守る、手伝いをしてもらいたい」
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辺りがしんと静まり返った。息をするのも躊躇わせる静けさの中、沈黙を破ったのはイークである。
「アスラードの力の正体は知っているか?」
低い声にライが頭を振って答える。
「……いや。エルダンテでは予言書を読む者としか聞いてない」
「予言書は元々、『時の神子』の力に反応しやすい作りになっている。ある意味では正解だが、それは真実とは違う」
イークを見据えるライの両眼に、動揺が見え隠れする。やはり、アスとの確執をまだ引きずっているらしい。すぐにどうにかしろという気にはならないが、そろそろはっきりしてもらいたいものだった。
アスを守るのか、それとも引き下がるのか。
僅かに息を吐いたイークは胡坐をかき直し、両膝の上に両肘を置いて手を組んだ。
「わたしも、そしてわたしへ繋がる歴代のリファムの国王も『時の神子』という存在をずっと追ってきた。その力を利用出来ればという魂胆だったが、まあ、どうも見込み違いをしていたらしいがね。……彼らは決して時代の表へ出ることなく、生まれては消えていく。『時の欠片』をエルダンテへ残しながら」
「エルダンテに」
「そうだ。お前がエルダンテで得た地位、そこに歴代の神子は納まっていた」
ライが息を飲む。
「エルダンテは昔から神子の存在を把握し、そして常に確保してきた。今、エルダンテにある『時の欠片』は随分な量になっているだろうよ」
「ちょっと待て。欠片、欠片って、何のことだよ」
淡々と話すイークの前にバーンが手の平を突き出す。イークは微苦笑し、顎をしゃくってアスを示した。
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