第二十一章 影の在り処



「……農具はオレらだけで片せって……?」

 バーンがぽつりと呟く。既に体は限界に近く、農具よりも自分たちの体をベッドに連れて行きたい心境である。

 だが、地面には役目を終えた農具たちが、早いところ寝床に連れてってくれと言わんばかりの顔を向けていた。


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 夜ともなれば昼間の暖かさが嘘のような寒さと静けさが城を包み込む。人気のない土地柄が静寂に拍車をかけ、城で聞こえる生活音以外には木々や鳥、獣たちの鳴き声しか聞こえない。

 耳に痛いばかりの静けさは不安を喚起させるものでもあるが、当面はその心配もなさそうだった。

 一気に増えた人数、そして彼らの賑やかさが外から押し寄せる静寂を打ち負かす。今までは三人で利用していた食事の場所も、人が増えたことで華やかになる。

 オッドはそんな人間の話し声や活気が好きだった。

「何か取ってこようか?」

 ぼんやりと賑やかな食事の様子を見ていたオッドにヴァークが声をかける。始めはどこか敬遠していた風の兄弟だったが、大人以上に順応が早いらしい。サークと共に気軽に声をかけてくれる。同じような年頃の姿が功を奏したのだろう。

「いや、もう充分だ。わしに遠慮せず、沢山お食べ」

「ふうん。賢者って皆そんなもんなのかよ」

「わしは特別小食かもしれんな。この世には賢者の号を頂く者がもう一人おるが、そやつは随分な大食らいで食費がかさんで困る」

「ああ、大陸には賢者が今は二人しかいないんだよね。何だか凄いなあ、そんな偉い人が目の前にいるなんて」

 目をきらきらとさせて、オッドの前に座るサークが言う。その隣に胡坐をかいたヴァークが、後ろで一人酒を飲むイークを見ながら頬杖をついた。

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