第二十一章 影の在り処



 屍よろしく横たわる彼らを眺めつつ現れたアスもさすがに驚き、ぎょっとしたようにイークへ尋ねた。

「……休ませたの?」

「今、休ませている」

 一人、平然とした表情でライたちの顔を眺めるイークの指導がどんなものかは聞くまでもない。かつては自分がその犠牲だった。

「一気に広がったね」

 木陰に腰掛けるイークの前に立ち、畑を振り返る。記憶にあるものよりずっと広い。

 すると、側で大の字に寝転ぶバーンが口を開いた。

「来たばかりの人間をこき使って、これだけの成果があがらなけりゃそれこそおかしいってもんだ。労いの言葉でもくれんのかよ」

「バーンたちが来るまでは私がその役だったからな。お疲れさま。それとイーク、馬小屋の鍵知らない?あと倉庫。あれらって鍵束になってただろ」

「私の部屋にあるが……すぐに必要か?」

「ああ、ならいいや。自分で開けるから」

「普通の鍵ならオレが開けてやろうか。ライと一緒に行って手伝ってやるよ」

 肩をびくりとさせたライを差し置いて、話を聞いたバーンが体を起こす。盗賊仕込みの鍵開けの技術はどんな鍵でも開けることが出来た。しかし、アスは手をひらひらとさせて断る。

「いいよ。自分で開けられる」

「後でちゃんと戻しておけよ。前に書庫の鍵がそのままになっていた」

 アスは苦笑して謝る。

 吹く風で汗が冷えるのを感じながらイークが問うた。

「倉庫に何の用だ?」

「馬に積んだ荷物とか、あと色々」

「手伝うか」

「いいよ、そんな重いものでもないし」

 腰を浮かしかけたイークに慌てて手を振る。あまりに手を貸してもらうと後が怖い。

 暗にそう含ませて言いながら、アスは皆の前を横切って立ち去った。

 バーンはその背中を見送り、隣に寝転ぶライに視線を戻して頬杖をつく。

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